プリーストリー(John Boynton Priestley)(読み)ぷりーすとりー(英語表記)John Boynton Priestley

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

プリーストリー(John Boynton Priestley)
ぷりーすとりー
John Boynton Priestley
(1894―1984)

イギリス小説家、劇作家評論家。イングランド北部の工業都市ブラッドフォードに教師の子として生まれる。会社勤めののち、第一次世界大戦勃発(ぼっぱつ)と同時に軍務に服した。のち、ケンブリッジ大学を卒業。1922年にロンドンに移るとジャーナリズム活躍を始め、小説『友達座』(1929)の大成功で文名を確立した。イギリス各地から集まった変わり者が偶然「友達座」を結成、各地を巡業して回る間の愉快な事件をピカレスク悪漢小説)風に描いたもので、その健全な人間生活の描写ディケンズ再来かといわれた。続いて一商社の没落にまつわる社員たちの市民生活を描く『エンジェル小路』(1930)でふたたび大成功を収めたのち劇作『危険な曲り角』(1932)でも人気を博した。地方の豪邸に集まった一見幸福な人々の間で、それぞれの人生の危険な曲がり角の真相が暴かれるが、結局それも無事に過ぎるさまを斬新(ざんしん)な作劇術で示し、日常の平凡な人生も密度の高いものに変えうるとする冷徹な見方に、作者の古風ながら急進的な姿勢がうかがえる作品である。ほかにも、『晴れた日』(1946)、『失われた帝国』(1965)など多数の小説、『夜の来訪者』(1947)をはじめ約50作に達する劇作がある。彼には深遠な思想はないが、イギリス文学に伝統的にみられる常識家人間像の魅力とその描写が、長く人々の心をとらえている。評論にも『メレディス論』(1926)、『イギリス小説』(1927)、『イギリスのユーモア』(1929)、『文学と人間像』(1960)など多数の著作がある。多面的な顔をみせた活躍で、1977年にはメリット勲章を受けた。

[小野寺健]

『内村直也訳『夜の来訪者』(1952・三笠書房)』『内村直也訳『危険な曲り角』(『現代世界戯曲全集5』所収・1954・白水社)』『阿部知二他訳『文学と人間像』(1973・筑摩書房)』『三省堂編修所訳『演劇の歴史』(1975・三省堂)』『小池滋訳『英国のユーモア』『英国人気質』(1999・秀文インターナショナル)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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