異型配偶子や異型接合体の略称としても用いられ、異型ともいう。二倍体以上の染色体をもつ高等生物で、一つ以上の特定の遺伝子座について、互いに異なった対立遺伝子をもつ細胞または個体の状態をいい、等しい対立遺伝子をもつホモhomozygousの状態に対する語。細菌やファージなど半数体の生物でも、染色体の一部が重複して存在し、互いに異なった対立遺伝子をもつ場合があり、この場合にもヘテロの語が使用される。このようなヘテロ状態の遺伝子をもつ個体は、高等生物では異なった対立遺伝子をもつ両親から生まれた子に生ずる。この際、表現型として現れるほうの形質を顕性、現れないほうの形質を潜性という。ヘテロ個体は、集団のなかでの潜性遺伝子を保存する役目をもつ。また、多くの個体にとっては、最適に近い表現形質の組合せをもたせるために役だっている。異なった遺伝子をもつ個体間の交雑によって生じたヘテロの動植物は、両親のどちらよりも強健で発育の盛んなものが多い。これを雑種強勢(ヘテローシス)という。カイコやニワトリで、2品種間の一代雑種が作成され、繭(まゆ)や卵、肉の生産の向上に使用されてきた。植物でも、トウモロコシで異なった品種間の交雑により、一代雑種が作成され、種子が大きく、生産量の多いものが育成されている。2個以上の同じ染色体上の遺伝子に関してのヘテロ個体は、染色体の乗換え(交差)頻度を利用して、染色体上の遺伝子座を決めるために使用される。また、潜性突然変異遺伝子についてヘテロの個体を用いて、放射線や化学物質の突然変異誘発作用を調べるためにも使用される。
[黒田行昭]
『駒井卓著『人類の遺伝学』(1966・培風館)』▽『藤巻宏他著『植物育種学 応用編』(1992・培風館)』▽『中山包著『植物生長の遺伝と生理』(1992・内田老鶴圃)』▽『田島弥太郎著『蚕の品種育成』(1993・サイエンスハウス)』▽『A. Rus Hoelzel他著、五条堀孝・沢村恵美訳『分子生態学入門――集団生物学と分子遺伝学の融合をめざして』(1994・南江堂)』▽『黒田行昭編著『21世紀への遺伝学1 基礎遺伝学』(1995・裳華房)』▽『岩槻邦男・加藤雅啓編『多様性の植物学2 植物の系統』(2000・東京大学出版会)』
ギリシア語のheterosに由来する,“他の”,“異種の”を意味する接頭語.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…ヘテローシスheterosisともいう。生物の種間または品種間の交雑を行うと,その一代雑種はしばしば両親のいずれよりも体質が強健で発育がよいという現象がみられる。…
※「ヘテロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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