ヘルツ(Gustav Ludwig Hertz)(読み)へるつ(英語表記)Gustav Ludwig Hertz

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ヘルツ(Gustav Ludwig Hertz)
へるつ
Gustav Ludwig Hertz
(1887―1975)

ドイツの原子物理学者。電磁波の存在を実験的に示したH・R・ヘルツの甥(おい)。ハンブルクに生まれる。ベルリン大学を卒業し、1920年にJ・フランクと共同で水銀蒸気の原子に対して電子を衝突させる実験を行った(フランク‐ヘルツの実験)。この実験は、当時の原子物理学の中心課題であったボーアの原子構造理論のなかに根本的仮定として含まれている「定常状態の存在」を実験的に確かめたものである。これによって量子論は実験的基礎を得たということができる。この業績によりヘルツはフランクとともに1925年のノーベル物理学賞を翌1926年に受賞した。

 1925年ハレ大学教授、1928年ベルリンのシャルロッテンブルク工科大学物理学教授。1935年からジーメンス研究所の所長となったが、ユダヤ人の血を引いていたため、ナチス政権をとってからは職を追われた。1945~1954年旧東ドイツと旧ソ連で研究を続け、1954~1961年ライプツィヒのカール・マルクス大学(1991年名称はライプツィヒ大学に復した)教授。

[田中國昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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