ベガ(英語表記)Lope Félix de Vega Carpio

精選版 日本国語大辞典 「ベガ」の意味・読み・例文・類語

ベガ

(Vega) 琴座のアルファ星。距離二六光年。実視等級〇・〇等。七夕(たなばた)祭の伝説で知られる星。漢名、織女星(しょくじょせい)

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デジタル大辞泉 「ベガ」の意味・読み・例文・類語

ベガ(Vega)

琴座αアルファ。白色の0.0等星で、北天屈指の明るい星。距離25光年。七夕たなばたの星の一つで、晩夏の午後8時ごろ天頂付近で輝く。織女しょくじょ織姫星おりひめぼし。→アルタイル

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改訂新版 世界大百科事典 「ベガ」の意味・わかりやすい解説

ベガ
Lope Félix de Vega Carpio
生没年:1562-1635

スペイン劇作家。ローペ・デ・ベガとも呼ぶ。国民演劇の創始者で,カルデロンとともに〈黄金世紀〉を代表する。若くして知りあったエレナ・オソリオとの恋愛が因でその家族と対立し,その結果カスティリャ地方から8年間の追放刑に処されたが,間もなくイサベル・デ・ウルビーナと結婚,直後に無敵艦隊に加わる(1588)。バレンシアで刑期を終了。イサベルの死後,人妻ミカエラ・デ・ルハンと恋におちるが(1595),一方,フアナ・デ・グアルドと再婚し二重生活をおくる。フアナの死後もヘロニマ・デ・ブルゴスと恋愛事件をおこす(1613)。1614年に聖職者となるが,18年には女優マルタ・デ・ネバーレスと恋におちる。晩年はマルタの失明と発狂,娘の失踪などにより傷心の日々を過ごした。こうした数々の恋愛の相手は,作品の中にフィリス(エレナ),ベリサ(イサベル),カミラ・ルシンダ(ミカエラ),アマリリスあるいはマリア・レオナルダ(マルタ)として現れる。自分の思いどおりの生き方をしただけに敵も多かったが,文学上はゴンゴラやルイス・デ・アラルコンとの対立が有名である。セルバンテスから〈自然の怪物〉と評された多作家で,劇作品だけでもコメディア1800編,聖餐神秘劇400編を書いたと言われ,現存するものだけでも約470編ある。国民演劇の創始者としての彼の劇作術は《現代戯曲新作法》(1609)に詳しいが,おもな点は,〈三統一の法則〉を初めとする古典の法則にこだわらず,あくまで民衆の好みを第一として,悲劇的なものと喜劇的なものとを混交させ,主筋と脇筋をからませた3幕構成で,人物のリアリティを重んじ,特に,ものの言い方に気をくばり,さらに,場面によって韻律を使い分けるものとした。名誉に関する事柄は人々を深く感動させるものであるとして,最良のテーマにしている。また,舞台と観客とのつなぎ役を果たし,主人公とは対極にあって,しばしば警句をはく道化役〈グラシオーソgracioso〉をつくり出した。歴史や伝説,民衆詩などに題材を求めた作品に傑作が多く,《フエンテ・オベフーナ》《ペリバーネエスとオカーニャの騎士団長》《オルメドの騎士》《国王こそは無二の判官》などがその代表的作品である。また,必ず大団円で終わる風俗恋愛劇〈合羽と剣の劇comedias de capa y espada〉をつくり出したのも彼である。彼には,カルデロンのような完成度の高さはないし,また,ティルソのような心理描写もない。ドン・クレスポ(カルデロンの《サラメアの村長》の主人公)やドン・フアン(ティルソの《セビリャの色事師と石の招客》の主人公)のような性格創造もない。しかし,〈スペインの不死鳥〉〈才能の不死鳥〉と評されたように,想像力の豊かさでは彼の右に出る者は一人もいなかった。筋立てを第一とした展開のおもしろさ,エネルギーこそは彼の演劇の最大の魅力である。
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ベガ
Vega

こと座のα星。北天屈指の白色の輝星。アラビア名のナスル・アルワーキーal-Naṣr al-wāqi`は〈落ちゆくワシ〉の意である。両わきのε,ζ2星を含めたV字形を翼をたたんで落下するワシの姿に見た。中国名の織女(しよくじよ)も同様にベガを中心とした3星の呼称と考えられる。この名の起源は古く,《小戴礼》(前漢,戴聖(たいせい)の撰)中の〈夏小正〉に記されている。和名の〈おりひめ〉〈たなばた〉〈めんたなばた〉などは,中国より伝来した七夕説話の影響とみなせる。もっとも〈棚機つ女(たなばたつめ)〉という固有の和名もあり,この名を織女星にあてた文化史的背景は深いと思える。アッシリア人はベガを天の審判者と呼び,デンデラ(エジプト)の神殿ではその出没が観測されたと伝えられる。このように,ベガは古代世界でことさら重視された痕跡をもつ。おそらく,この星がはるか1万年以上昔の北極星であった事実に無縁ではあるまい。また,たなばたつめ=水の女とする折口信夫の考証を,女神(=大地母神)と牡牛(=牽牛(けんぎゆう))を結ぶ汎(はん)世界的古代神話の解釈へと広げることもできよう。女神は豊穣多産を象徴することから水との関連が不可欠である。一般に,七夕の起源は中国の漢水流域(漢は銀河の意でもある)に求められているが,一説には,張子房(前200ころ)によって西方より伝えられたともいわれ,七夕説話成立(後漢のころ)以前からこの星が注目されていた理由とともに,今後の考究が望まれる。なお,天文学では,ほぼ同時期に初の年周視差測定に成功した三つの星のうちの一つとして知られる。また,恒星の中で初めてダゲロタイプに記録された記念すべき星でもある。概略位置は赤経18h37m,赤緯+38°47′。午後9時の南中は8月中旬である。A0型のスペクトルをもつ主系列星で,実視等級は0.0等。距離は25光年。
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百科事典マイペディア 「ベガ」の意味・わかりやすい解説

ベガ

スペイン文学黄金世紀を代表する劇作家,詩人。〈自然の怪物〉と称された多作家で,およそ2000編の戯曲を書いたといわれるが,現存するのは400編余である。国民劇《コメディア》の完成者として知られる彼の劇作法の要点は,〈三一致の法則〉(三統一)をはじめとする古典劇の掟を無視し,観客の好みに合わせたというところにある。彼の作品を大別すれば〈マントと剣と劇〉と呼ばれる風俗恋愛劇と歴史や民衆詩に題材を求めたもの,ということになるが,傑作の多くは後者に属し,《フエンテオベフーナ》,《オルメードの騎士》,《国王こそは無二の司法官》などが代表作である。
→関連項目カルデロン・デ・ラ・バルカ近代劇ティルソ・デ・モリーナ

ベガ

こと座のα星。七夕(たなばた)の織女星で,白色の0.0等星。距離25光年。銀河をはさんでアルタイルと対する。
→関連項目織姫牽牛(星)こと(琴)座織女北極星

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベガ」の意味・わかりやすい解説

ベガ
Vega

こと座α星 (α-Lyr) の固有名。七夕の織女星 (おりひめ) のことで,全天の恒星のうちで3番目に明るい。ベガは「舞降りる禿鷹 (はげたか) 」という意味のアラビア名。見かけの明るさは 0.03等,スペクトル型は A0型,有効温度は 9600Kで,白色の主系列星である。星の直径および質量はともに太陽の約3倍,絶対光度は太陽の約 70倍に達する。地球からの距離は 26光年,固有運動は1年間に 0.345″で1万 400年間に1°動くことに相当し,また視線方向の速度は -14km/s である。地球の歳差のために,西暦1万 4000年には北極星となる。

ベガ
Vega Carpio, Lope Félix de

[生]1562.11.25. マドリード
[没]1635.8.27. マドリード
スペインの劇作家。冒険と情熱の波乱に富んだ生涯をおくりながら,1800編の戯曲と 400編以上の聖体秘跡劇のほか,あらゆる形式の詩集 21巻を書いてセルバンテスから「自然の怪物」と呼ばれた。彼は黄金世紀のスペイン演劇を創始し,あらゆるテーマを劇化したが,史劇では『ペリバニェスとオカーニャ騎士団長』 Peribáñez y el comendador de Ocaña,『フエンテ・オベフナ』 Fuente Ovejuna,喜劇では『マドリードの鉄鉱泉』 El acero de Madrid,『水がめの娘』 La moza de cántaroなどが有名。

ベガ
Vega, Garcilaso de la

[生]1501頃
[没]1536
スペインの詩人。文学,政治,芸術の分野で人材を輩出したトレドの旧家に生れ,ナポリのアルバ公に仕えて,スペインの伝統的形式にイタリア・ルネサンスの官能美を加味した詩を書いた。作品に『牧歌集』 Églogasがある。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ベガ」の解説

ベガ
Lope Félix de Vega Carpio

1562~1635

スペインの劇作家。生涯で約2200の作品を書き,その多作ぶりをセルバンテスは「自然界の怪物」と評した。古典演劇の法則にとらわれず,民衆の好みに合致した新しい演劇「コメディア」をつくり出した国民演劇の創始者として知られる。

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デジタル大辞泉プラス 「ベガ」の解説

ベガ〔競走馬〕

1990年生まれの日本の競走馬。牝馬(ひんば)。桜花賞、オークスで優勝。繁殖馬としても優秀で、子のアドマイヤベガはダービー優勝、アドマイヤドンはG1競走7勝をあげた。

ベガ〔キャラクター〕

カプコンの対戦格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズに登場するキャラクター。「VEGA」とも書く。海外版での名前はM. Bison(バイソン)。

ベガ〔筆記具〕

株式会社パイロットコーポレーションの油性ボールペン、シャープペンシルの商品名。太軸タイプ。

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世界大百科事典(旧版)内のベガの言及

【スペイン演劇】より

…しかし,この古典主義からはずれたところに〈黄金世紀〉の国民演劇があった。ローペ・デ・ベガこそは,このスペイン独特の劇作術を創造した作家である。悲劇的なものと喜劇的なものを混交させ,民衆の嗜好を尊び,わかりやすさを第一とした。…

【スペイン文学】より

…17世紀になると政治的衰退による社会の混乱や,他の国にまして深く根をおろした反宗教改革の影響によって,この世を虚偽に満ちたはかない夢と見なす厭世的な幻滅思想が広がり,その上にスペイン・バロック文学が花をひらくことになる。
[詩]
 スペイン・ルネサンスの新しい詩はソネットをはじめとするイタリア様式を導入したガルシラソ・デ・ラ・ベガに始まるが,彼の《牧歌》は愛の感動,美しい自然描写,音楽性が完璧な形式と調和した絶唱である。その後このイタリア詩派はスペインの伝統と融合し,ルイス・デ・レオン率いるところの,地味な響きと深い精神性を重視するサラマンカ派と,フェルナンド・デ・エレラFernando de Herrera(1534‐97)を領袖とし,形式美と華麗さを強調するセビリャ派に分かれた。…

【悲喜劇】より

…モリエールの《人間嫌い》は深刻な結末をもつ喜劇といってもいいだろう。少し前の時代のスペインのローペ・デ・ベガは,高位の人物と庶民が出会うことから起こる事件を悲喜劇と見ていた。また,W.シェークスピアの作品が,悲劇性と喜劇性を同じ作品のなかで同時に示していることはよく指摘されるが,よく観察すると,それは交互におこるのではなく,喜劇的な要因が,悲劇的な相関関係のなかに深く根をおろしており,それがコントラストの効果を生みだしているのである。…

【ベレス・デ・ゲバラ】より

…生涯に400編(うち80編が現存)の戯曲を書き,そのジャンルは聖人伝,史劇,幕間狂言,聖餐神秘劇など多岐にわたっている。文体がローペ・デ・ベガのそれに酷似しており,彼との間に〈原作者〉の問題もおこるほどであったが,《ラベーラの山家娘》は,同じ題名のローペの作を凌ぐできと評された。彼の名声を高めたのは《王は血より重し》《死後に君臨す》の二つの史劇である。…

【牽牛・織女】より

…おそらく元来は牽牛が男の仕事である農耕を,織女が女の仕事である養蚕紡織を象徴し,神話的宇宙観の中で二元構造をなす一対の神格であったものが,星座にも反映されたものであろう。星名は,牽牛がアルタイルAltair,織女がベガVega。この2神は,後には七夕(たなばた)の行事と結びついた恋愛譚の主人公となる。…

【こと座(琴座)】より

…ギリシア神話では楽人オルフェウスの持物である亀の甲でつくった楽器にかたどる。α星は光度0.0等,スペクトル型A0の輝星で固有名はベガ,東洋では七夕の織女星として有名である。最近の赤外線観測によればこの星の周辺に惑星系が存在するという。…

【等級】より

…地上にある2000K程度の近似黒体と,大気外の高温の星を同一器械で観測しなければならない。現在もっともよいとされるのはV=0.03のこと座のベガの5556Åの波長で3.45×10-9erg/s/cm2/Åである。このように観測されたものを見かけの等級(小文字mで表す)という。…

※「ベガ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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