ベニシタバ(読み)べにしたば(英語表記)rosy underwing

改訂新版 世界大百科事典 「ベニシタバ」の意味・わかりやすい解説

ベニシタバ (紅下翅)
Catocala electa

鱗翅目ヤガ科の昆虫。後翅は明るい桃色,前翅灰色樹皮状で,静止するときには後翅をその下に隠す。開張約7cm。ユーラシア温帯に産し,日本では本土にまれでない。幼虫ヤナギにつき,夏に羽化,卵で越冬する。後翅の赤いベニシタバ類は,日本に3種分布しており,本種に似たエゾベニシタバC.nuptaが主として本州中部以北に生息しており,幼虫はドロノキポプラにつく。オニベニシタバC.dulaでは後翅は朱色に近く,ミズナラ,クヌギカシワなどにつく。いずれも卵で越冬し,新緑のころ食草の葉を食べて育ち,夏に成虫が現れる。なお,シタバガ亜科Catocalinaeのうち,シタバガと呼ばれる一群は日本に29種を産し,後翅すなわち下ばねの色彩に従って,ベニシタバ,キシタバシロシタバなどと名づけられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベニシタバ」の意味・わかりやすい解説

ベニシタバ
べにしたば / 紅下翅蛾
rosy underwing
[学] Catocala electa

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤガ科に属するガ。はねの開張70ミリ内外の大形種。前翅は灰色、黒色の横線が3本あり、波状あるいは鋸歯(きょし)状に屈曲する。はねの前縁部ではっきりしているがしだいに細まる。後翅ははねの基部から3分の2までは紅色、外縁部と中央部は黒色、外縁と縁毛は白い。北海道、本州、四国、九州に分布するが、南西部では少ない。国外では、朝鮮半島からヨーロッパまで分布している。幼虫はイヌコリヤナギなどのヤナギ類につき、老熟したものが樹幹に静止していると、樹皮とそっくりで見分けにくい。成虫がはねを畳み、後翅を前翅の下に隠しているときも樹皮と似ている。

[井上 寛]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベニシタバ」の意味・わかりやすい解説

ベニシタバ
Catocala electa

鱗翅目ヤガ科。前翅長 35~39mm。前翅は灰色で樹皮状の斑紋がある。後翅は美しい桃赤色で幅広い黒色横帯に縁どられ,中央に鉤状の黒色斑がある。外縁は細く白色。幼虫はヤナギ類の葉を食べる。成虫は樹液に集り,また灯火に飛来する。普通にみられるシタバガで,ユーラシア大陸に広く分布しており,北海道,本州,四国,九州に産するものを亜種 C. e.zalmunnaという。

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