ベバリッジ(英語表記)William Henry Beveridge

改訂新版 世界大百科事典 「ベバリッジ」の意味・わかりやすい解説

ベバリッジ
William Henry Beveridge
生没年:1879-1963

イギリスの経済学者,社会政策学者。父の任地インドに生まれ,オックスフォード大学に学び,その法学講師となった。一時《モーニング・ポスト》紙論説委員。その後商務省入りをし失業問題を研究し,失業の原因が労働者個人にではなく労働力市場の不完全性にあることを実証した《失業論》(1909)を世に問い,職業紹介所の創設に参画(1908)した。第1次世界大戦中は軍需省や食糧省に勤務。新設のロンドン・スクール・オブ・エコノミックスの初代学長(1919-37),オックスフォード大学のユニバーシティ・カレッジ学長(1937-45)。その間第2次大戦中はチャーチル内閣の労働次官(1941),〈社会保険および関連サービス各省連絡委員会〉委員長に任ぜられ,戦後世界の社会保障に決定的な影響を与えた《ベバリッジ報告》(1942)を提出した。一時自由党所属の下院議員(1944-45)でもあった。またケインズの影響をうけ,《自由社会における完全雇用》(1944)を著した。戦後男爵位を授けられた(1946)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベバリッジ」の意味・わかりやすい解説

ベバリッジ
Beveridge, William Henry, 1st Baron; Beveridge of Tuggal

[生]1879.3.5. ラングプール
[没]1963.3.16. オックスフォード
インド生れのイギリスの法律学者,経済学者。オックスフォード大学卒業後弁護士となったが,1903年トインビー・ホールの副館長に就任して社会問題,失業問題の研究にたずさわるかたわら,『モーニング・ポスト』紙の論説を担当。 08年商務院に入り,国営保険施行とそのための諸機構整備に尽力。 19年から 18年間ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学長をつとめるとともに,政府の各種委員会に関係。 37年オックスフォード大学のユニバーシティ・カレッジ学寮長に選ばれ,42年社会保険の総合調整に関する委員会設置に伴い,その委員長としていわゆる「ベバリッジ報告」をとりまとめた。主著『失業問題』 Unemployment: A Problem of Industry (1909) ,『自由社会における完全雇用』 Full Employment in a Free Society (44) 。

ベバリッジ
Beveridge, Albert Jeremiah

[生]1862.10.6. オハイオ,ハイランド
[没]1927.4.27. インディアナ,インディアナポリス
アメリカの政治家歴史家。 1899~1911年イリノイ州選出の連邦上院議員。 12年 T.ルーズベルト革新党結成。 14,22年連邦上院議員に立候補したが落選。すぐれた歴史家でもあり,主著『ジョン・マーシャルの生涯』 The Life of John Marshall (1916~19) がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のベバリッジの言及

【ベバリッジ報告】より

…イギリスで1941年6月に創設された〈社会保険および関連サービス各省連絡委員会〉(委員長W.H.ベバリッジ)が翌年11月に提出した報告書。ビバリッジ報告ともいう。…

※「ベバリッジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android