ベルン(読み)べるん(英語表記)Bern

精選版 日本国語大辞典 「ベルン」の意味・読み・例文・類語

ベルン

(Bern) スイス連邦の首都。同国中西部のアーレ川のほとりにある。一一九一年に建設され、一二一八年自由都市となり、一八四八年に首都となった。市街は中世の面影を残し、万国郵便連合などの国際機関がある。

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デジタル大辞泉 「ベルン」の意味・読み・例文・類語

ベルン(Bern)

スイス連邦の首都。ライン川の支流アーレ川に沿い、橋によって新旧市街が結ばれる。精密機械工業が盛ん。UPU(万国郵便連合)の本部がある。旧市街は、1983年、世界遺産文化遺産)に登録された。人口、行政区12万、都市圏35万(2008)。ベルヌ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルン」の意味・わかりやすい解説

ベルン
べるん
Bern

スイス連邦の首都で、ベルン州の州都。同国中西部、アーレ川沿いに発達した都市で、チューリヒローザンヌを結ぶ鉄道のほぼ中間にある。人口12万2469(2001)。スイスの都市としては比較的新しく、12世紀後半に西方に対する軍事都市として建設されたのに始まる。そのため、スイスの他の都市と異なり、ローマ人のつくった城壁がない。人口の86%はドイツ語、それぞれ6%はフランス語とイタリア語を話し、77%がプロテスタント、21%がカトリックである。スイスのドイツ語圏とフランス語圏が接する所にあることから首都となり、連邦政府が置かれている。アーレ川が大きく蛇行する内側の台地上にある旧市街は中世のおもかげを残し、町並みは地形に適応する形でつくられており、道路が東西に走る。ここには連邦議事堂、連邦政府庁舎、市役所、大寺院(1421~1598建築)、自然博物館、アルプス博物館、劇場などがあり、市の中枢部をなしている。旧市街は1983年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。現在の市域はこの外側に拡張され、新市街はアーレ川に架かるいくつもの橋で旧市街と結ばれ、住宅地となっており、一部に工場が立地する。精密機械、繊維、チョコレートなどの工業が盛んである。また、総合大学(1834設立)、万国郵便連合本部(1874設立)などもある。ベルンの名はクマBärに由来し、市の紋章にはクマの図案が用いられている。

 ベルン州はスイスのほぼ中央にあり、面積5961平方キロメートルはグラウビュンデン州に次ぎ同国第2位の広さをもつ。人口94万7100(2001)はチューリヒ州に次ぎ第2位。南部の山岳地帯はベルン・アルプスを中心に観光・保養と農牧業、中部の丘陵・低地は工業と農業、北部のジュラ山脈は農牧業と分散して立地する時計工業に特色がある。

[前島郁雄]

歴史

1191年、最後のツェーリンゲン公ベルヒトルト5世によって、ライン川支流アーレ川の湾曲部にあるニーデック城下に市街が建設された。公の没後の1218年、上層貴族が支配権をもつ帝国都市となり、西に向けて急速に発展した。周辺の諸侯の圧力に対抗するため、ウリ、シュウィーツウンターワルデンのスイス独立の同盟三州(原初三州)と同盟し、その支援で1339年ラウペンの戦いに勝ち、1353年スイス誓約同盟に加入、永久同盟を結んだ。15世紀に入ると権力を伸ばし、ハプスブルク家領のアールガウを占領、ブルグント公国、サボア公国と戦って領域を拡大した。1528年には新教を採用し、チューリヒと並んでスイスの指導的な州の一つとなった。1798年フランス革命軍に一時占領されたが、1813年復旧、1830年の七月革命を機に民主的改革がなされ、1846年新憲法を制定、1848年連邦の首都となった。

[中井晶夫]


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改訂新版 世界大百科事典 「ベルン」の意味・わかりやすい解説

ベルン
Bern

スイスの首都で,スイス連邦を構成するカントン(州)およびその州都名。都市域人口34万(2004)。アーレ川湾曲部の段丘上に1191年にツェーリンゲン家によって建設された。1218年同家の断絶によって帝国都市となり,13~14世紀から積極的に周辺領域を購入して都市国家を形成してゆく。領域拡大に反発した西スイス地方の貴族層を1339年ベルン南西のラウペンLaupenの戦で打ち負かし,53年にはスイス盟約者団のうちの原初3邦とゆるい同盟関係に入った。15世紀前半に他の盟約者団メンバーとも同盟を結び,政治的・軍事的方面で指導的役割を果たした。領域支配の拡大が終了した1600年ごろには現在のスイス領土の3分の1を領有する強力な都市国家をつくりあげた。1798年,ヘルベティア共和国下では四つのカントンに分割されたが,1803年のナポレオン調停条約によってアールガウAargau,ボーVaudを除いて失われた領土を回復した。1815年の復古時代にアールガウ,ボーの代償として,バーゼル司教領ジュラが与えられたが,ジュラはフランス語圏でカトリックが優勢であったため,1528年に宗教改革化したドイツ語圏ベルンにとって異分子を抱え込む結果となった(北ジュラは1979年分離して,新カントン,ジュラを形成した)。1848年スイス連邦の発足とともに都市ベルンは首都となったが,強固な地方分権下,首都といっても政治,経済の中枢的性格をもっていない。

 現在では,アルプス観光の拠点基地であるだけではなく,中世以来の都市らしい整然とした街路を残し,アルプス山脈の眺望にも優れた観光都市として重要である。11基のさまざまな彫像を備えた中世の噴水,16世紀に再建された大時計塔,15世紀初頭のゴシック様式の市庁舎,ルネサンス様式のステンド・グラスに彩られる大聖堂と観光対象にはこと欠かない。またベルン生れの画家パウル・クレーとホドラーの作品を多数集めているベルン美術館,15世紀のブルゴーニュ戦争の戦利品を展示する歴史博物館も観光対象として見逃せない。観光以外でも商業,金融の中心地をなしている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベルン」の意味・わかりやすい解説

ベルン
Bern

スイスの首都,ベルン州の州都。フランス語でベルヌ Berne。スイス中部,トゥーン湖とビール湖のほぼ中間に位置する。住民のほとんどはドイツ系プロテスタント。 1191年,ドイツ系のアラマンニ人とフランス系のブルグンド人の居住地の境界にあたるアーレ川の渡河地点に,ツェーリンゲン家のベルトルト5世公によって建設された城塞が市の起源。 1218年神聖ローマ帝国直轄の自由都市となり,1353年には独立の州としてスイス同盟に加わった。 1848年以降,首都として連邦の政治中心地。市街地周辺にチョコレート製造,織物,原動機,化学,薬品などの工業が立地する。スイス諸都市のなかで最も中世の面影を残す旧市街は 1983年世界遺産の文化遺産に登録。ゴシック様式の大聖堂 (1421~1598,高さ 100mの尖塔は 1893) ,市会堂 (1406~16) ,時計台 (16世紀) などがあり,1834年創立のベルン大学は 80万冊を収める図書館をもつ。そのほか 100万冊を収蔵する国立図書館,スイス山岳博物館などの各種博物館,音楽堂,P.クレーのコレクションで有名な美術館,1948年建設の連邦議会場などがある。万国郵便連合をはじめ,電信,鉄道,著作権などの多くの国際機関がここに本部を置く。人口 12万3466(2010推計)。

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百科事典マイペディア 「ベルン」の意味・わかりやすい解説

ベルン

スイス連邦の首都。同国中部,アーレ川に臨む。機械,繊維,食品などの工業が行われ,万国郵便連合本部,大学,アルプス博物館などがある。1191年創建。1353年スイス同盟に参加,1848年スイス連邦の首都。だが分権が確立しているので,政治的,経済的中心とはなっていない。1405年の大火以降に石造りで再建された旧市街は,1983年世界文化遺産に登録。12万5700人(2011)。
→関連項目スイス

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世界遺産情報 「ベルン」の解説

ベルン

スイスの首都であるベルンは、古都の風情が感じられる美しい街です。湾曲するアーレ川に囲まれた地形をいかして造られた旧市街は、ユネスコの世界遺産に登録されました。街の名前はシンボルでもある熊(ベアレン)に由来し、町の中央には熊公園もあります。13世紀の城門の跡につくられた時計塔、見事な彫刻の噴水が点在する旧市街や個性的な博物館や美術館など見どころは尽きません。また、ヨーロッパ最長ともいわれる石造りのアーケードがあり、雨の日でも濡れずにショッピングが楽しめます。

出典 KNT近畿日本ツーリスト(株)世界遺産情報について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ベルン」の解説

ベルン
Bern

1848年以来スイス連邦の首都。12世紀末に建設され,1218年に皇帝直属都市となった。14世紀半ばスイス同盟に参加し,以後発展をとげ,スイスにおける政治・観光の中心都市となった。

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