ベロニカ(ゴマノハグサ科)(読み)べろにか

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベロニカ(ゴマノハグサ科)
べろにか
[学] Veronica

ゴマノハグサ科(APG分類:オオバコ科ベロニカ属(クワガタソウ属)の総称。北半球の温帯に約300種分布するが、園芸界では花壇、切り花用として栽培される品種群をベロニカと称している。日本でよく栽培されるのは滋賀県の伊吹山(いぶきやま)に自生するルリトラノオV. subsessilis Carr.を改良したものである。ルリトラノオは耐寒性の多年草で、高さ70~90センチメートル。茎は四角形で直立し、ほとんど分枝しない。葉は対生し、長卵形で先はとがり、鋸歯(きょし)と短毛がある。7~8月、茎頂に総状花序をつくり、青紫色の小花を群生する。本種のほか、ごく矮性(わいせい)のヒメルリトラノオ、高さ50~60センチメートルのスピカタ種V. spicata L.なども栽培される。繁殖はおもに株分けによるが、挿芽も可能である。日当りのよい腐植質に富んだ場所を好み、乾燥を嫌うが、排水が悪いと根腐(ねぐされ)病をおこす。

[神田敬二 2021年8月20日]

文化史

属名のベロニカは、十字架を背負って処刑の丘に向かう途中のキリストの顔から流れる汗をハンカチでぬぐったと伝えられる聖女ベロニカの名にちなむが、ベロニカ属植物とは直接の結び付きはない。本属はイヌフグリ、クワガタソウなど変わった名の植物を含む。イヌフグリの名は蒴果(さくか)の形態がイヌのふぐり(陰嚢(いんのう))を思わせることによる。しかし、イヌフグリの英名にはバーズ・アイbird's-eye(小鳥の目)やエンジェルズ・アイangel's-eye(天使の目)があり、和名の由来とは大いに異なる。またクワガタソウは、果実の形が兜(かぶと)のようで、とくに宿存萼(しゅくぞんがく)が、兜の角(つの)のように立つ前立(まえだち)の鍬形(くわがた)に似ることによる。

[湯浅浩史 2021年8月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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