カナダ生れのアメリカの小説家。ユダヤ系。9歳のとき両親と共に移住したシカゴの陋巷(ろうこう)で少年時代を送り,シカゴ大学からノースウェスタン大学に移って人類学と社会学の分野を優等で卒業。20代の大半をさまざまな職業につきながらの創作精進に過ごしたあげく,1944年に発表した処女長編《宙ぶらりんの男》が好評を博し,続いて46年には英語の講師としてミネソタ大学に就職,以来方々の大学で英文学や創作指導の授業を担当しながら,活発な創作活動を続けている。前述の処女長編も第2作《犠牲者》(1947)も,現代の庶民の都市生活を写実的に描きながら,前者では人間の〈自由〉の本質を,後者では被害者がそのまま加害者でもありうる人間関係の機微を鋭く追求して,アメリカ小説には珍しく思想性を表面に出した知的な肌合いの小説である。《オーギー・マーチの冒険》(1953)はまた一転して,主人公が饒舌体の語り口で波乱にみちた自分の半生を語るという結構をとり,シカゴの貧家に生まれた少年の自己探求の旅を軸に現代社会を活写したピカレスク風の長編。《その日をつかめ》(1956)では,成功者の父親から人間の屑と罵られる息子の現代の敗者ぶりを描きながら,いわゆる〈シュレミール(どじな奴)〉の救いの道が探求される。この探求の趣向は次の《雨の王ヘンダーソン》(1959)でも同断だが,おのれの運命の充足を求めてアフリカにとびこんで行く巨大な体軀の50男の遍歴の姿を,《オーギー・マーチ》から受け継いだ放胆な文体で描いたこの長編では,主人公の動静に重ね合わせてアメリカ人全体の思考と行動が戯画的にとらえられている気配がある。世評の高い《ハーツォグ》(1964)では,自伝的色彩をも加味した元大学教授が主人公。妻の不貞という屈辱的状況にある彼は,胸中に噴出する懊悩を投函のあてのない無数の書簡や内的独白の形で吐露するが,その懊悩は私生活上の問題から現代のはらむ諸問題へ,人間存在そのものの根本問題へと深まってゆく。こうした“疎外”された状況にある現代人一般の普遍的問題を,〈ヌーボー・ロマン〉的新手法にくみしないで,あくまでも旧来の小説技法を駆使しながら表現するのがこれまでのベローの一貫した態度である。アウシュビッツの生残りの老ユダヤ人と60年代アメリカ文明との衝突を設定した《サムラー氏の惑星》(1970)でも,商業主義が跳梁する現代社会に生きる芸術家の浮沈を描いた《フンボルトの贈物》(1975)でも,シカゴとブカレストという二つの都市生活の対比のうちに現代を代表する政治体制の荒廃の姿を描いた《学生部長の十二月》(1982)でも,人間性を圧殺する現代世界における人間救済というモラリスティックなベローの創作態度は執拗に続けられている。
執筆者:野崎 孝
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
大きな可動性を特徴とする蛇腹に似た図のような構造をもつ機械部品で,リン青銅,低炭素ステンレス鋼,黄銅などの薄い管材料に冷間ダイス圧延加工をして成形されたものが多い.伸び曲げが機械的に自由であり,気密な構造にすれば内外の圧力差により軸方向に伸縮するため,この性質を利用して圧力計,圧力スイッチ,調圧弁,温度制御,回転軸のシール,真空バルブ,ポンプ類,伸縮・可動継手などの部品として用いる.市販のサイズは内径6~800 mm 程度.化学用としては,テフロン製品や金属にテフロンコーティングをしたもの,合成ゴム,プラスチックの製品がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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1858~1927
ドイツの歴史家。封建制の公法的機能と中世国家の国家性の論証を主たるテーマとして,ドイツ中世の法制史および社会経済史の研究に卓越した業績を残した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…ワルシャワで文筆生活の後,1935年アメリカに亡命,イディッシュ語新聞《フォワード》の編集のかたわら同紙に小説を発表。53年《ギンペルの馬鹿》がソール・ベローによって英訳され,注目をあびた。作品はすべてイディッシュ語で書かれ,古いポーランドのユダヤ人村落を題材にしたものが多く,聖と俗,現実と幻想の交錯する悪魔的な官能の世界を描き,愛と信仰の問題を追究している。…
※「ベロー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...
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