ベンジジン(読み)べんじじん(英語表記)benzidine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンジジン」の意味・わかりやすい解説

ベンジジン
べんじじん
benzidine

芳香族アミンの一つ。4,4'-ジアミノビフェニルともいう。無色またはやや赤色結晶。酸素と光で暗黒色に変化する。冷水には溶けにくく、熱水には溶ける。熱エタノール(エチルアルコール)にはよく溶ける。80℃以上の熱水から再結晶したものは無水和物、60℃以下からは一水和物を生じる。ニトロベンゼンの還元で得られるヒドラゾベンゼン無機酸と加熱すると、転位反応(ベンジジン転位)がおこって生成する。染料の原料として使われたが、現在は使用を禁止されている。また種々の金属イオンの検出試薬、リン酸イオン、硫酸イオン沈殿試薬としても用いられる。発癌(はつがん)性が強く、粉末でも蒸気でも皮膚から吸収されるので、取扱いには十分注意する必要がある。

[務台 潔]

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改訂新版 世界大百科事典 「ベンジジン」の意味・わかりやすい解説

ベンジジン
benzidine


4,4′-ジアミノビフェニルともいう。無色の鱗片状結晶。3型が存在し,最安定型は融点128℃,沸点400~401℃(740mmHg)。1845年にロシアのジーニンN.N.Zininがはじめて合成し,62年にドイツのフィティヒR.Fittigがジアミノビフェニル構造であることを証明し,74年に同じくドイツのシュルツG.Schultzが2個のアミノ基がともにパラ位にあることを示して構造が確定した。ニトロベンゼンを還元してヒドラゾベンゼンにしたのち,これに塩酸または硫酸を作用させてベンジジン転位を起こすことによって作られる。

発癌性があるため,現在では使用禁止となっているが,かつては,染料合成における重要な中間体として,また有機化合物の合成原料,無機イオンの分析試薬などとして使われた。
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化学辞典 第2版 「ベンジジン」の解説

ベンジジン
ベンジジン
benzidine

biphenyl-4,4′-diamine.C12H12N2(184.24).ヒドラゾベンゼン希硫酸と加熱して,ベンジジン転位させてつくられる.結晶形は3種類あるが,もっとも安定なものは融点128 ℃,沸点400 ℃(98.6 kPa).直接染料の重要な中間物であったが,発がん性があることがわかり,製造されなくなった.分析試薬として多くの金属および非金属イオンの定性,定量に用いられる.[CAS 92-87-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベンジジン」の意味・わかりやすい解説

ベンジジン
benzidine

4,4′- ジアミノビフェニルのこと。化学式 H2NC6H4C6H4NH2 。無色の結晶。融点 128℃ (無水物) 。水に難溶。普通は塩酸塩として利用される。過酸化水素の検出,硫酸イオン SO42- の定量試薬として用いられる。染料中間体として重要なものであったが,発癌性が問題となってからは使われていない。

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