日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ベーム(Karl Böhm)
べーむ
Karl Böhm
(1894―1981)
オーストリアの指揮者。20世紀を代表する大指揮者の1人。オーストリア共和国音楽総監督の称号をもつ。生地グラーツの歌劇場練習指揮者としてスタート、1917年同歌劇場指揮者となり、以後、ミュンヘン、ダルムシュタット、ハンブルク、ドレスデン各歌劇場の指揮者、音楽監督、総監督を歴任。この間R・シュトラウスと親交を結び、そのオペラ上演に尽力、またダルムシュタット時代には現代作品を積極的に紹介して注目された。43~45年および54~56年ウィーン国立歌劇場の総監督を務め、その後はバイロイト、メトロポリタンなどに招かれて自由な活動を続けた。一方、コンサート活動も活発で、1933年ウィーン・フィルを初めて指揮して以来、この名門と密接な関係をもち、67年その名誉指揮者となる。ベルリン・フィルをはじめ世界各地の名門オーケストラに客演、揺るぎない名声を確立した。
1963年(昭和38)ベルリン・ドイツ・オペラと初来日、その後75年、77年ウィーン・フィルと、80年ウィーン国立歌劇場と来日、いずれも多大の感銘を与えた。レパートリーは、ごく少数の作品を除きドイツ音楽に限られていたが、つねに作品の本質を志向する真摯(しんし)な表現と強靭(きょうじん)な構成力に独特の味わいがあった。
[岩井宏之]
『F・エンドラー著、高辻知義訳『カール・ベーム』(1983・新潮社)』