ペロー(Dominique Perrault)(読み)ぺろー(英語表記)Dominique Perrault

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ペロー(Dominique Perrault)
ぺろー
Dominique Perrault
(1953― )

フランスの建築家。クレルモン・フェラン生まれ。1978年、パリ第6建築大学卒業。1979年、国立土木大学(エコール・デ・ポンゼショセ)で都市計画を学ぶ。1980年、国立高等社会科学大学大学院で18世紀の修道院について研究。1981年に自らの事務所を開設。

 1989年パリのグラン・プロジェ(大統領ミッテランの指示で行われたパリの都市改造計画。1980年代初めに開始)の最後を飾るフランス国立図書館の国際コンペにおいて一等を獲得し、ペローは一躍世界的な注目を浴びた。このコンペの結果は時代の変化を鮮やかに象徴している。多くが1980年代のポスト・モダンを反映したデザインを提案したのに対し、シンプルな4本のガラスの塔をきわだたせたペローの案は、1990年代における透明な建築の流行に先鞭をつけた。図書館でありながら全面ガラスを採用し、モダニズムに回帰しつつもガラスの内側可動の木製パネルを設置することで、直射日光侵入に対して配慮している。図書館は、建築の内側に自然を囲い込み、ミニマル・アートやランドスケープ・デザインからの影響が認められる。また金属製の織物の開発など、工業的なディテールにもこだわっている。

 ペローは、ハイテク風のデザインを行う一方で、自然と建築の関係を追求した。例えばデンマークのコロニーハーフェン(1995)は、1本の果樹を4枚のガラス板で囲み、梯子(はしご)を一つ置く屋外のインスタレーションである。また、ベルリンのオリンピック自転車競技場および水泳プール(1999)は、巨大な円盤矩形の施設を地面より低く埋め込み、りんごの樹を植えて周囲の風景から建物を隠している。巨大なボリュームでありながら、フランス国立図書館と同様、外側からははっきりと見えない建築を繰り返す。小さな城館を改造したユジノール・サシロール会議場(1991、サン・ジェルマン・アン・レー)も諸施設を地下に収蔵し、既存の部分を丸いガラス面の上に置く。円形のガラスを池に見立て、あたかも水上の館のようである。

 そのほかの主な建築作品にマルヌ・ラ・バレ高等電子技術学校(1987、パリ郊外)、パリのベルリエール工業館(1990)、イブリーの浄水場(1994、パリ)など。著書に『ドミニク・ペロー』Dominique Perrault(1994)、『自然』Des Natures(1996)、『家具と織物』Meubles et Tapisseries(1997)などがある。

[五十嵐太郎]

『Dominique Perrault(1994, Artemis, Zürich)』『Des Natures ; Jenseits der Architektur(1996, Birkhäuser, Basel)』『Meubles et Tapisseries(1997, Birkhäuser, Basel)』『伊東豊雄・元岡展久ほか著『ドミニク・ペロー――都市という自然』(1998・TNプローブ)』『東京大学工学部建築学科安藤忠雄研究室編『建築家たちの20代』(1999・TOTO出版)』『Bibliothèque Nationale de France 1989-1995(1995, Birkhäuser, Basel)』『Dominique Perrault, Architect(1999, Actar, Barcelona)』

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