ホウキギ(読み)ほうきぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウキギ」の意味・わかりやすい解説

ホウキギ
ほうきぎ / 箒木
[学] Bassia scoparia (L.) A.J.Scott
Kochia scoparia (L.) Schrad.

アカザ科(APG分類:ヒユ科)の一年草ホウキグサともいう。古名ハハキギ。中国原産。茎は直立して高さ約1メートルとなり、下部から著しく分枝し、枝は開出する。これで草箒(くさぼうき)をつくるのでホウキギの名がある。葉は互生し、倒披針(とうひしん)形または狭披針形で長さ2~4.5センチメートル、幅3~7センチメートル、基部はしだいに狭まり、3脈が目だち、両面に褐色の絹毛がある。雌雄同株。10~11月、葉腋(ようえき)に淡緑色で無柄の花を1~3個束生し、大きな円錐(えんすい)花序をつくる。花被(かひ)は扁球(へんきゅう)形の壺(つぼ)状で5裂し、裂片は三角形、果実期には、花被片の背部に各1個の水平な翼ができて星形となる。種子は扁平(へんぺい)な広卵形で、長さ1.5ミリメートル。

[小林純子 2021年2月17日]

食用

若い葉は摘んでひたし物や和(あ)え物として食べ、種子を「とんぶり」とよび、食用にする。とんぶりの作り方は、果実を煮てから水に浸し、ざるにとって流水中で手でよくもみ、殻を除いて種子だけとする。種子は吸水して膨らみ、透明感がある淡緑白色で、「植物のキャビア」と例えられる。三杯酢などで味つけし、酒の肴(さかな)や納豆に混ぜる。とんぶりは秋田県などが特産地である。

[星川清親 2021年2月17日]

文化史

種子を中国では地膚子(じふし)の名で、3~4世紀ころから薬にし、『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)集注』(500ころ)には利尿剤強壮剤としての用途があげられている。日本では『延喜式(えんぎしき)』に雑薬として、武蔵(むさし)国と下総(しもうさ)国からの献上が記録されている。江戸時代には広く庭や畑で栽培され、生鮮野菜以外に、若葉熱湯にくぐらせて乾燥保存もされた。

[湯浅浩史 2021年2月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ホウキギ」の意味・わかりやすい解説

ホウキギ (箒木)
Kochia scoparia (L.) Schrad.

アカザ科の一年草。ユーラシア大陸の乾燥地帯に広く分布する。英名はsummer cypress,belvidere,broom-goosefoot。和名はほうきを作ることに由来。日本には基準型と比べ葉が厚い型が野生し,イソボウキf.littorea (Makino) Kitam.として区別されることがある。海岸の塩分を含んだ湿地にはえ,とくに瀬戸内海沿岸の塩田に多い。栽培されているホウキギはとくによく枝分れする系統で,f.trichophila Schinz.et Thell.として区別されることがある。茎は高さ50~100cm。茎上部の分枝が多く,枝は斜上して束状になる。根際で茎を切りとり乾燥させれば,枝は硬くなってそのままほうきとして利用できる。イソボウキでは茎下部からの分枝が多く枝は開出し,ほうき作りには適さない。葉は長さ2~4cmの披針形で,イソボウキでは幅3~7cm,ホウキギではより細い。花は10~11月に咲き,葉腋(ようえき)に1~3個つく。両性花で花被は5枚あり基部は合着する。径約5mm。果実は宿存する花被に包まれ,中に1個の種子がある。種子は含油量が多く,秋田県ではとんぶりと呼ばれ,食用となる。種子にはサポニンが含まれる。また種子や植物体を乾燥させたものは薬用とされ,利尿剤として利用される。若葉や若い茎は食用となる。

 ホウキギ属Kochiaは約90種を含み,ユーラシア,アフリカ,オーストラリアの主として乾燥地帯に分布する。
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百科事典マイペディア 「ホウキギ」の意味・わかりやすい解説

ホウキギ

ユーラシア大陸原産のアカザ科の一年草。各地に野生化し栽植もされる。茎は高さ1m内外,多数分枝し,全体が球形となる。葉は互生し,倒披針形。8〜9月葉腋に花穂を出し,淡緑色の小さな花を多数つける。秋,全草が紅紫色に紅葉する。実はとんぶりとよばれて食用になり,若い葉も食べられる。茎はかわかして箒(ほうき)とされる。東海地方〜九州の海岸には近縁のイソホウキギが野生する。

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