化学辞典 第2版 の解説
ホスホモリブデン酸(塩)
ホスホモリブデンサンエン
phosphomolybdic acid(phosphomolybdate)
Pをヘテロ原子とするMoのヘテロポリ酸(慣用名)．リンモリブデン酸(塩)，モリブドリン酸(塩)ともいう．ホスホ十二モリブデン酸(塩)(IUPAC半体系的慣用名)(phosphododecamolybdate)H3[PMo12O40]･nH2O(n ＝ 5，14，24，29，30，31など)．代表的なホスホモリブデン酸．リン酸水溶液にMoO3を加えて煮沸した後，エーテルで遊離酸が抽出できる．酸と金属酸化物から，各種の金属塩がつくられる．H3[PMo12O40]･14H2Oは，三斜晶系(三十水和物は立方晶系)．[PMo12O40]3－ は正八面体型のMoO6が12個でつくる四面体型のかごの中央に，正四面体型のPO4が入っているケギン構造α型である．アルカリ金属などの塩では，β型が得られるものもある．酸は水に易溶．アルコール類やエーテルに可溶．水溶液は強い酸性を示す．Wの同型の化合物よりは還元，加水分解などを受けやすいため，より強い酸化剤としてはたらく．Na，Kなどの塩も黄色の結晶で，水溶性である．アルカロイドやタンパク質などの沈殿用や分析用の試薬，レーキ顔料の原料，顕微鏡検査で神経の染色，モリブデンブルー法による定量分析の試薬，さらにNa塩はプラスチックの接着や，セメントの耐水剤に用いられる．そのほか，ホスホ九モリブデン酸(塩)，たとえばNa3[H6PMo9O34]･12H2Oや，[P2Mo18O62]6－，[P2Mo5O23]6－ などのイオンを含むものも得られている．「モリブデン及びその化合物」は化学物質排出把握管理促進法・第一種指定化学物質．[CAS 12026-57-2]
出典 森北出版「化学辞典（第2版）」化学辞典 第2版について 情報