日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ボリス・ゴドゥノフ(プーシキンの劇詩)
ぼりすごどぅのふ
Борис Годунов/Boris Godunov
プーシキンの劇詩。23場。1825年作。シェークスピアに範を仰ぎ、無韻の弱強五歩格で書かれた悲劇。カラムジンの『ロシア国史』に依拠して、1598~1605年、モスクワ大公国の土台を揺り動かした「動乱(スムータ)」に材をとり、皇子暗殺と帝位簒奪(さんだつ)の嫌疑の渦中に戴冠(たいかん)したボリス・ゴドゥノフの苦悩、大貴族たちの権謀術数、僭称(せんしょう)皇帝ドミトリーの野望、彼を操る外国勢力の陰謀、コサックの動き、歴史の波動を形成する無名の人民の力を躍動的に描いた。本質的に「読むための劇」で、上演は困難だが、ムソルグスキーがオペラ化した。
[栗原成郎]
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