ボレロ(英語表記)bolero

翻訳|bolero

デジタル大辞泉 「ボレロ」の意味・読み・例文・類語

ボレロ(〈スペイン〉bolero)

スペインの民族舞踏および舞曲。4分の3拍子、中庸の速度で、カスタネットリズムをとることが多い。1780年ごろ成立したという。
前が開いた、ウエストまでの短い上着。
[補説]作品名別項。→ボレロ

ボレロ【〈フランス〉Boléro】[曲名]

ラベル管弦楽曲。1928年、バレリーナイダルビンシュタイン依頼により作曲。同年、パリのオペラ座で初演。最後の2小節を除き、同一のリズムと2種類のメロディーが繰り返される特徴的な楽曲として知られる。ラベルの代表作の一。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ボレロ」の意味・読み・例文・類語

ボレロ

[1] 〘名〙 (bolero)
① スペインの舞曲、舞踏の一つ。あまり速くない四分の三拍子の曲で、カスタネットやタンバリンの伴奏で踊る。〔外来語辞典(1914)〕
② 前あきでボタンのない短い上着。
※通学物語(1941)〈渋沢秀雄〉柳絮「ボレロみたいな上着を袖に手を通さずに羽織った彼女の」
[2] (原題Boléro) 管弦楽曲。ラベル作曲。一九二七年作、翌年初演。スペインのボレロのリズムをさまざまに変形して繰り返し強調する曲で、本来バレエのためにつくられた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ボレロ」の意味・わかりやすい解説

ボレロ
bolero

スペインの舞曲で,18世紀の末ころにセギディーリャの一型として創り出された。スペイン語ではボレーロと発音される。創始者ないし初期の名手として,舞踊手セバスティアン・セレーソSebastián Cerezoおよびアントン・ボリーチェAntón Bolicheの名が記憶されている。従来のセギディーリャよりいちだんと優美な踊りで,形式名に関しては諸説あるが,軽やかな身のこなしから〈volar〉(飛ぶ)という言葉に関連があるとする説が強い。19世紀初頭からスペイン舞踊の最もたいせつな演目として,スペイン本国のみならずヨーロッパ諸国にも知られた。たとえばショパンも1833年に1曲のボレロを作曲している。ボレロは3拍子であるが,ポーランドポロネーズに似て符割りが細かく,浮き立つような楽しさがある。その後もこの独特なリズムを用いて作曲を試みた人は少なくないが,最も名高いのは,1928年にラベルバレエ音楽として書いた1編である。スペインでは各地方の町村に民俗舞曲化したボレロも聴かれる。

 なおキューバで19世紀の末から抒情的な歌曲として発達したボレロは,名前こそ同じでもリズムの実体が異なり,2拍子または4拍子である。このキューバ起源のボレロはメキシコほかラテン・アメリカ諸国に広まり,大衆的でリズミカル歌謡の一典型として好まれ数々の名曲を生んだ。トリオ・ロス・パンチョス持歌もほとんどがボレロのリズムによっている。
執筆者:

ボレロ
bolero[スペイン]

ウエストよりも丈の短い女性用の上着。打合せがなく,前を開けたままで着る。衿なしで袖なしのものと袖のついたものがある。ブラウスやワンピースの上に着用する。スペインで闘牛士の着ている胴衣に由来するといわれ,19世紀半ばから女性や子どもが着るようになった。1930年代に大流行し,以来今日にいたるまで流行が繰り返されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ボレロ」の意味・わかりやすい解説

ボレロ

スペインの舞曲。3拍子系で複雑な符割りをもつ。舞踊家S.セレーソの創始(18世紀後半)ともいわれるが,スペインの民俗舞踊セギディーリャから生まれたという説もある。ショパンもこの独特なリズムを用いたピアノ曲を書き(1833年),特にラベルのバレエ音楽《ボレロ》(1928年,ニジンスカの振付で初演)が名高い。スペイン各地に民俗舞曲化したボレロがあり,また,キューバには同じく〈ボレロ〉と呼ばれる2拍子ないしは4拍子の音楽がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボレロ」の意味・わかりやすい解説

ボレロ
Boléro

1幕のバレエ。音楽 M.ラベル。振付 B.ニジンスカ。 1928年 I.ルビンシテイン・バレエ団により,パリ・オペラ座で初演された。本来のいきいきとしたリズムは単調なもの憂いリズムに変っているが,ステップそのものはスペインの舞踊ボレロのステップを使った抽象的な作品である。このほか H.ランダー,S.リファール振付のものなどがあるが,今日では 61年 M.ベジャール振付によるものが最も知られ,上演される。ベジャール版には主役が女性,男性と異なる数種があるが,赤い円卓の中央に上半身裸で J.ドンがただ一人演じたものは,儀式的な生命力と官能に満ち,熱狂的なブームを巻起した。

ボレロ
bolero

服飾用語で,女性,子供用のウエストより短い上衣。袖のあるものとないものとがあり,一般にはボタンや留め具なしで前開きのまま着るのが特色。スペインの闘牛士の着る上着は,その典型 19世紀中頃,フランスのウージェニー皇妃の発想から婦人・子供服の流行に登場し,同世紀末期,近くは 1950年代にも流行した。ワンピースやブラウスの上に着用し,ボレロジャケット,ボレロコートなどと呼ぶこともある。

ボレロ
bolero

スペインの代表的な舞踊で,1780年にスペインの舞踊家 S.セレソによって創作された。ギターとタンバリンによる4分の3拍子の強いアクセントのついたリズムを伴奏に,踊り手は1人または2人組で,カスタネットを鳴らしながら複雑なステップを踏む。 20世紀後半プエルトリコで流行したボレロは感傷的な性格が強い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「ボレロ」の解説

ボレロ

①フランスの作曲家モーリス・ラヴェルの管弦楽曲(1928)。原題《Boléro》。最後の2小節を除き、2種類のメロディーと単一のリズムが繰り返される非常に特徴的な楽曲として知られる。ラヴェルの代表作の一つ。
②①を使用したバレエ。原題《Boléro》。ロシア出身の舞踊家・振付家、ブロニスラヴァ・ニジンスカによる振付でイダ・ルビンスタインが1928年に初演。今日ではモーリス・ベジャールの振付でジョルジュ・ドンがソリストを務めた作品が有名。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のボレロの言及

【スペイン音楽】より

…新・旧カスティリャ,レオン,エストレマドゥラ,ムルシアの各地方にも,古い伝統に立つ美しい民謡や舞曲は少なくない。とくにラ・マンチャのセギディーリャはスペイン舞曲の典型として,マドリードに発生したボレロやアンダルシアのセビリャーナスsevillanasを生む母体ともなった重要なものである。そして,こんにちスペインの民俗芸能を代表するものとなったアンダルシアのフラメンコがある。…

【スペイン舞踊】より

…スペインは,舞踊のさかんなことにかけてはヨーロッパでも指折りの国である。ボレロセギディーリャホタファンダンゴ,各種フラメンコ舞踊など世界的に知られる踊りも少なくない。なかでも著名なのはフラメンコだが,これがスペイン舞踊のすべてであるように思うのは誤解で,この国にはより古い歴史をもつ古典舞踊や,それぞれ固有の風土を背景とした多様な民俗舞踊の流れも存在する。…

※「ボレロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android