ポライウオーロ(兄弟)(読み)ぽらいうおーろ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポライウオーロ(兄弟)」の意味・わかりやすい解説

ポライウオーロ(兄弟)
ぽらいうおーろ

イタリアの画家兼彫刻家の兄弟。兄アントニオAntonio Pollaiuolo(1432―1498)、弟ピエロPiero P.(1441―1496) ともにフィレンツェに生まれ、ローマに没。父の家業の「鳥肉商」によりポライウオーロとよばれたという。絵画作品では兄弟の共作によるものが多く、弟ピエロ個人のものとしてはウフィツィ美術館の6点の『美徳像』(1469~1470)のうち3点があげられるだけで、兄アントニオが全面的に仕上げたと確実視されるものは皆無である。そして2人の共作のほうがピエロ個人のものよりも優れている。2人による絵画のうちもっとも重要視されるのは『聖セバスチャンの殉教』(1475・ロンドン、ナショナル・ギャラリー)であるが、前景にみる弓の射手の人体像には、アントニオのブロンズ彫刻『ヘラクレスアンタイオス』(フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館)に示された人体構造についての精通ぶりがよく認められる。

 研究者の多くは、アントニオのフィレンツェ美術に対する重要な貢献として、風景描写と運動する人体の解剖学的研究をあげるが、銅版画『裸人たちの闘争』(1470ころ・ウフィツィ美術館)には、そうした彼の真面目(しんめんもく)がよく発揮されている。また彼は人体研究のために、自ら解剖を実施した点でレオナルド・ダ・ビンチの先駆者といえるが、その成果は彼の素描に如実に反映している。彫刻でのアントニオの代表作は『教皇シクストゥス4世の墓碑』(署名と1493年の年記がある)と『教皇インノケンティウス8世の墓碑』(1495ころ)で、ともにローマのサン・ピエトロ大聖堂にある。

[濱谷勝也]


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