マキノ雅広(読み)マキノマサヒロ

デジタル大辞泉 「マキノ雅広」の意味・読み・例文・類語

まきの‐まさひろ【マキノ雅広】

[1908~1993]映画監督。京都の生まれ。本名、牧野正唯まさただ。日本映画の父といわれる牧野省三の長男。幼少のころから俳優として活躍、のちに映画監督となる。戦前・戦後を通じてリアルな時代劇の佳作を世に送り出した。代表作「浪人街」シリーズ、「殺陣師たてし段平」「次郎長三国志」シリーズなど。何度か改名しており、雅広は、正博・雅弘・雅裕と書いたこともあった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マキノ雅広」の意味・わかりやすい解説

マキノ雅広
まきのまさひろ
(1908―1993)

映画監督。本名牧野正唯(まさただ)。京都府生まれ。日本映画の父といわれた牧野省三(しょうぞう)の長男。幼いころから映画に出演、のち助監督、俳優を務め、1927年(昭和2)『週間苦行』で監督となる。1928年『浪人街 第一話 美しき獲物』では希望のない浪人たちの生きざまを描いた異色作として注目され、同年発表の『蹴合鶏(けあいどり)』『崇禅寺馬場』とともに昭和初期時代劇の名篇(へん)として高く評価された。1937年日活に入社。『恋山彦』『江戸の荒鷲(あらわし)』などの娯楽時代劇をつくる。1940年東宝に移り『昨日消えた男』『男の花道』『婦系図(おんなけいず)』などのヒット作に手腕を振るう。戦後は松竹映画『待ちぼうけの女』、東横映画『殺陣師(たてし)段平』等の佳作を生む。1952年から1954年には東宝映画『次郎長三国志』シリーズ9本が有名。以後は東映で『日本侠客(きょうかく)伝』『昭和残侠伝』等の任侠(にんきょう)シリーズにベテランの力を発揮した。名前を正博、雅弘、雅裕、雅広と四度改名。また「早撮りの名手」ともよばれた。

[長崎 一]

資料 監督作品一覧

青い眼の人形(1926)
謎の一夜(1927)
週間苦行(1927)
学生五人男 爛漫(らんまん)篇(1927)
学生五人男 暗黒篇(1927)
鍵穴(1927)
学生五人男 飛躍篇(1927)
青春を掏摸(すり)とられた話(1927)
妖婦(1927)
八笑人(1927)
合点勘次(1927)
愛(かな)しき彼(1928)
燃ゆる花片(はなびら)(1928)
仇討(あだうち)殉情録(1928)
間者(1928)
蹴合鶏(1928)
毒華(どくげ)(1928)
浪人街 第一話 美しき獲物(1928)
崇禅寺馬場(1928)
浪人街 第二話 楽屋風呂(1929)
浪人街 第二話 楽屋風呂解決篇(1929)
大化新政(1929)
弥次喜多 第三篇(1929)
戻橋(1929)
首の座(1929)
荒木又右衛門[全五篇](1929)
浪人街 第三話 憑(つ)かれた人々(1929)
運命線上に躍る人々(1930)
草に祈る(1930)
偽婚真婚(1930)
学生三代記 明治時代(1930)
学生三代記 昭和時代(1930)
腹の立つ忠臣蔵(1930)
嬰児(えいじ)殺し(1930)
紅燈一代女(1930)
真田(さなだ)十勇士(1931)
幕末風雲記 堀新兵衛の巻・新門辰五郎の巻・清水次郎長の巻(1931)
マキノ大行進曲(1931)
赤鞘安兵衛(あかざややすべえ)(1931)
ぴんころ長次(1931)
浪人太平記(1931)
泥だらけの天使(1931)
喧嘩(けんか)道中記(1932)
二番手赤穂浪士(あこうろうし)(1932)
黎明(れいめい)(1932)
七人の花嫁(1932)
平十郎小判(1932)
白夜の饗宴(うたげ)(1932)
燃ゆる花片(はなびら)(1933)
岩見重太郎(1934)
さくら音頭(1934)
泡立つビール(泡立つ青春)(1934)
春霞(はるがすみ)八百八町(1935)
活人剣 荒木又右衛門(1935)
江戸噺鼠小僧(えどばなしねずみこぞう)(1935)
花の春遠山桜(1936)
白浪五人男(1936)
最後の土曜日(1936)
国定忠治 信州子守唄(1936)
丹下左膳 乾雲(けんうん)必殺の巻(1936)
丹下左膳 坤竜呪縛(こんりゅうじゅばく)之巻(1936)
恋慕の砧(きぬた)(1936)
次郎長裸旅(1936)
三ン下剣法(1936)
加賀見山(1936)
弥太郎笠 前篇(1936)
平仮名恋愛帖(1936)
江戸の花和尚(1936)
修羅八荒 第一篇(1936)
芝浜の革財布(1936)
修羅八荒 第二篇(1936)
修羅八荒 第三篇(1936)
八州侠客(きょうかく)陣(1936)
怪盗影法師(1936)
喧嘩大明神(1936)
ごろんぼ街(1936)
流れ雲三度笠(1936)
忠治血笑記(1936)
忍術猛獣国探検(1936)
決戦荒神山(1936)
舞扇(1936)
忠烈肉弾三勇士(1936)
忠治活殺剣(1936)
赤垣源蔵徳利の別れ(1936)
初鳶櫓(はつとびやぐら)音頭(1936)
妖術白縫変化(1937)
青春五人男 前後篇(1937)
女左膳 妖火の巻(1937)
女左膳 魔剣の巻(1937)
喧嘩菩薩(ぼさつ)(1937)
花婿百万石(1937)
戀山彦(こいやまびこ) 風雲の巻(1937)
遊侠太平記(1937)
戀山彦 怒濤(どとう)の巻(1937)
妖棋伝 前篇(1937)
国定忠治(1937)
江戸の荒鷲(あらわし)(1937)
血煙高田の馬場(1937)
自来也(1937)
江戸の花和尚(1938)
鴛鴦(おしどり)道中(1938)
鞍馬天狗 角兵衛獅子の巻(1938)
忠臣蔵 天の巻(1938)
忠次小守唄(1938)
新撰組(1938)
燃ゆる黎明(1938)
弥次喜多道中記(1938)
浮名小路(1939)
袈裟(けさ)と盛遠(もりとお)(1939)
江戸の悪太郎(1939)
浪人街(1939)
清水港(1939)
鴛鴦歌合戦(1939)
弥次喜多 名君初上り(1940)
續(ぞく)清水港(1940)
織田信長(1940)
昨日消えた男(1941)
家光と彦左(1941)
阿波の踊子(1941)
世紀は笑ふ(1941)
男の花道(1941)
待って居た男(1942)
婦系図(1942)
續婦系図(1942)
阿片(アヘン)戦争(1943)
ハナコさん(1943)
坊ちゃん土俵入り(1943)
勧進帳(1943)
不沈艦撃沈(1944)
野戦軍楽隊(1944)
必勝歌(1945)
千日前附近(1945)
グランド・ショウ一九四六年(1946)
粋(いき)な風来坊(1946)
待ちぼうけの女(1946)
のんきな父さん(1946)
満月城の歌合戦(1946)
非常線(1947)
淑女サーカス(1947)
愉快な仲間(1947)
金色夜叉(こんじきやしゃ) 前後篇(1948)
肉体の門(1948)
幽霊暁に死す(1948)
ボス(1949)
盤獄江戸へ行く(1949)
佐平次捕物帖 紫頭巾(むらさきずきん) 前篇(1949)
佐平次捕物帖 紫頭巾 解決篇(1949)
傷だらけの男(1950)
熊谷陣屋(1950)
殺陣師段平(1950)
レ・ミゼラブル あゝ無情 第二部 愛と自由の旗(1950)
千石纏(せんごくまとい)(1950)
女賊と判官(1951)
お艶(つや)殺し(1951)
豪快三人男(1951)
酔いどれ八萬騎(はちまんき)(1951)
神戸銀次郎(1951)
おかる勘平(1952)
浮雲日記(1952)
やぐら太鼓(1952)
離婚(1952)
すっ飛び駕(かご)(1952)
武蔵と小次郎(1952)
弥太郎笠 前後篇(1952)
次郎長三國志(さんごくし) 次郎長賣(うり)出す(1952)
ハワイの夜(1953)
次郎長三国志 次郎長初旅(1953)
抱擁(1953)
次郎長三国志 第三部 次郎長と石松(1953)
次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港(1953)
丹下左膳(1953)
續丹下左膳(1953)
次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路(1953)
次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家(1953)
次郎長三国志 第七部 初祝い清水港(1954)
美しき鷹(1954)
御ひいき六花撰(ろっかせん) 素ッ飛び男(1954)
次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊(1954)
やくざ囃子(ばやし)(1954)
次郎長三国志 第九部 荒神山(1954)
此村(これむら)大吉(1954)
次郎長遊侠伝 秋葉の火祭り(1955)
人形佐七捕物帖 めくら狼(1955)
次郎長遊侠伝 天城鴉(あまぎがらす)(1955)
りゃんこの弥太郎(1955)
赤城の血祭(1955)
人生とんぼ返り(1955)
丹下左膳 乾雲の巻(1956)
朝やけ血戦場(1956)
丹下左膳 坤竜の巻(1956)
丹下左膳 昇竜の巻(1956)
恐怖の逃亡(1956)
影に居た男(1956)
純情部隊(1957)
浪人街(1957)
仇討崇禅寺馬場(1957)
阿波おどり 鳴門の海賊(1957)
一本刀土俵入(1957)
おしどり駕籠(かご)(1958)
非常線(1958)
不敵なる反抗(1958)
清水港の名物男 遠州森の石松(1958)
捨てうり勘兵衛(1958)
喧嘩笠(けんかがさ)(1958)
鞍馬天狗(1959)
たつまき奉行(1959)
恋山彦(1959)
江戸の悪太郎(1959)
雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)(1959)
弥太郎笠(1960)
天保六花撰 地獄の花道(1960)
清水港に来た男(1960)
神田祭り喧嘩笠(1960)
若き日の次郎長 東海の顔役(1960)
江戸っ子肌(1961)
月形半平太(1961)
東海一の若親分(1961)
江戸っ子繁昌記(1961)
港祭りに来た男(1961)
若き日の次郎長 東海道のつむじ風(1962)
千姫と秀頼(1962)
橋蔵のやくざ判官(1962)
次郎長と小天狗 殴り込み甲州路(1962)
大暴れ五十三次(1963)
いれずみ半太郎(1963)
八州遊侠伝 男の盃(さかずき)(1963)
九ちゃん刀を抜いて(1963)
次郎長三国志(1963)
続次郎長三国志(1963)
次郎長三国志 第三部(1964)
日本侠客伝(1964)
日本侠客伝 浪花篇(1965)
色ごと師春団治(1965)
蝶々雄二の夫婦善哉(めおとぜんざい)(1965)
日本侠客伝 関東篇(1965)
次郎長三国志 甲州路殴り込み(1965)
任侠男一匹(1965)
日本侠客伝 血斗神田祭り(1966)
日本大侠客(1966)
日本侠客伝 雷門の決斗(1966)
男の顔は切札(1966)
日本侠客伝 白刃の盃(1967)
昭和残侠伝 血染の唐獅子(1967)
日本侠客伝 斬り込み(1967)
侠骨一代(1967)
日本侠客伝 絶縁状(1968)
侠客列伝(1968)
ごろつき(1968)
新網走番外地(1968)
昭和残侠伝 唐獅子仁義(1969)
日本侠客伝 花と龍(1969)
日本残侠伝(1969)
悪名一番勝負(1969)
女組長(1970)
牡丹と竜(1970)
玄海遊侠伝 破れかぶれ(1970)
昭和残侠伝 死んで貰います(1970)
日本やくざ伝 総長への道(1971)
関東緋桜(ひざくら)一家(1972)

『マキノ雅弘著『伝記叢書 カツドウ屋一代 伝記・牧野省三』(1998・大空社)』『山田宏一著『次郎長三国志――マキノ雅弘の世界』(2002・ワイズ出版)』『『映画渡世――マキノ雅弘自伝 天の巻』『映画渡世――マキノ雅弘自伝 地の巻』新装版(2002・平凡社)』

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百科事典マイペディア 「マキノ雅広」の意味・わかりやすい解説

マキノ雅広【まきのまさひろ】

映画監督。本名牧野正唯。京都生れ。〈日本映画の父〉と称された牧野省三の長男。京都市立一中修了。4歳から子役で映画出演し,18歳の時《青い眼の人形》(1926年)で監督デビュー。サイレント映画の末期を飾る《浪人街》三部作(1928年―1929年),ミュージカル時代劇《鴛鴦歌合戦》(1939年)などの娯楽作品を矢継ぎ早に発表。戦後も大川橋蔵主演の《雪之丞変化》(1959年)などの時代劇や,高倉健の人気シリーズ《新網走番外地》(1968年),《昭和残侠伝・死んで貰います》(1970年),藤純子引退記念作品《関東緋桜一家》(1972年)などの任侠映画を手がけ,生涯の監督作品は261本に及んだ。自伝《映画渡世》全2巻がある。正博,雅弘,雅裕,雅広と4度改名。
→関連項目岡本喜八長門裕之山中貞雄

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マキノ雅広」の意味・わかりやすい解説

マキノ雅広
マキノまさひろ

[生]1908.2.29. 京都
[没]1993.10.29. 東京
映画監督。たびたび改名し,正博,雅弘,雅裕など。本名牧野正唯。日本映画界の先駆者といわれた牧野省三の長男として生れ,幼少から映画界に入る。 1927年『週間苦行』を発表して監督となる。昭和初期『蹴合鶏』 (1928) ,『浪人街』 (28) ,『首の座』 (29) など,虚無と反抗を盛込んだ時代劇の傑作を生み注目された。以後早撮りと器用な演出ぶりで数多くの娯楽作品を作った。おもな作品『崇禅寺馬場』 (28) ,『婦系図』 (42) ,『待ちぼうけの女』 (46) ,『次郎長三国志』 (52~54) ,『日本侠客伝』 (64~71) など。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「マキノ雅広」の解説

マキノ雅広 マキノ-まさひろ

1908-1993 昭和-平成時代の映画監督。
明治41年2月29日生まれ。牧野省三の長男。幼時から映画に出演。昭和2年「週間苦行」で監督となり,「崇禅寺馬場」,「浪人街」(2部作)などで評価される。戦後の作品に「次郎長三国志」「日本侠客伝」など。平成5年10月29日死去。85歳。京都出身。同志社大中退。前名は正博,雅弘(裕)。本名は牧野正唯。自伝に「映画渡世」。

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