マケドニア国名問題(読み)まけどにあこくめいもんだい

知恵蔵 「マケドニア国名問題」の解説

マケドニア国名問題

マケドニア」という国名を巡り、ギリシャとマケドニア(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国)が長年対立している問題。バルカン半島中部にあるマケドニアはユーゴスラビア連邦の解体に伴い、1991年にマケドニア共和国として独立した。しかし国境を接するギリシャが、マケドニアを国名に冠したことは領土的な野心の表れとして猛反発。禁輸措置を発動したことから、緊張が高まった。ギリシャにとって、マケドニアは古代ギリシャからの由緒ある地名で、現在も国の北部をマケドニア地方と呼んでいる。一方、マケドニアはアレクサンドロス(アレクサンダー)大王が率いた古代マケドニア王国の唯一の末裔であるなどとして、国名の正当性を主張する(ただし、多くの歴史家は連続性を否定している)。
93年、マケドニアが国連加盟を申請した際には、ギリシャの抗議を受け、「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国(FYROM)」という暫定国名を使うことで合意した。2008年には、北太平洋条約機構(NATO)への加盟を目指すマケドニアが、加盟を阻止しているギリシャを国際司法裁判所に提訴。マケドニアの主張が認められたものの、ギリシャが承認せず、NATO加盟は実現しなかった。
その後も、両国とも主張を譲らなかったが、17年5月にマケドニアで穏健左派を中心とした連立政権が誕生すると一転。NATOと欧州連合(EU)への加盟を目指すザエフ首相は、国名変更を前提にギリシャとの和解交渉を始めた。現在(18年3月時点)、国連の仲介の下、新マケドニア共和国や北マケドニア共和国など、「マケドニア」の名称を入れた新しい国名が検討されている模様。18年2月には、マケドニア政府がギリシャに配慮し、首都スコピエのアレクサンダー大王空港をスコピエ国際空港に改称している。ギリシャはこうした柔軟姿勢を評価しているが、国内では「マケドニア」の名称が継続することへの大規模な反対デモが起こるなど、ナショナリズムが高揚している。

(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android