マスクラット(英語表記)muskrat
Ondatra zibethica

デジタル大辞泉 「マスクラット」の意味・読み・例文・類語

マスクラット(muskrat)

ネズミ科の哺乳類体長25~35センチ、尾長18~28センチ。体は暗褐色で、後ろ足水かきをもち、肛門近くに麝香じゃこう臭を放つせんがある。岸辺にすみ、巣穴の出入り口水中に作る。北アメリカ分布日本では毛皮獣として飼育されていたものが野生化。においねずみ。

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精選版 日本国語大辞典 「マスクラット」の意味・読み・例文・類語

マスク‐ラット

〘名〙 (muskrat) ネズミ科の哺乳類。頭胴長二二~三六センチメートル、尾長一九~二八センチメートルの大形のネズミ。体は水生に適し、手足が大きく、後足には硬毛の列があり、水かきの代わりをする。尾は左右に扁平で、付け根に一対の腺があり麝香臭を発する。北アメリカ原産で、沼沢地・池・河川にすみ、水生植物の根や茎、貝などを食べる。日本には、毛皮獣として飼育されていたものが野生化している。においねずみ。

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改訂新版 世界大百科事典 「マスクラット」の意味・わかりやすい解説

マスクラット
muskrat
Ondatra zibethica

齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類。大型の水生のネズミで,北アメリカの北部のツンドラ南部の沿岸地方および砂漠を除く地域に分布。体長23~33cm,尾長18~30cm,体重680~1820g。体はがんじょうで,後足は大きく,一部の指間には水かきが発達する。尾はほとんど無毛で,左右に平たく,遊泳時に舵として働く。尾の付け根に1対の腺があり麝香(musk)臭を放つのでマスクラットの名がある。体毛は長く粗い上毛と短く非常に柔らかで上質な下毛からなる。体色は銀褐色からほとんど黒色まである。沼沢地,湖沼,河川にすみ,土手トンネルを掘ったり,水生植物を水中に積み上げて巣とする。多くは雌雄ですむが,雌が子を生むと雄は近接した別の巣で生活する。主食はスイレン,ガマ,クワイなどの水生植物の根や茎で,他に少量のカニや小魚をとる。ほとんどを水中で過ごし,通常2~3分,最高で17分ほども潜水可能で,水中を潜ったまま約100mを泳ぐ。繁殖は年に2~6回で,妊娠期間25~30日,1産1~11子である。寿命は野生で平均3年,飼育下で10年に達する。

 毛皮獣としてヨーロッパからシベリア,日本および南アメリカ北部と南部などに移入されたものが野生化し,土手や溝にトンネルを掘るので害を及ぼしている。日本では1947年春に東京の江戸川で初めて捕獲され,生息が確認されたが,ヨーロッパにおけるほど増殖せず,千葉,埼玉付近でハス田やキンギョ養殖場への加害が報告されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マスクラット」の意味・わかりやすい解説

マスクラット
ますくらっと
musk rat
[学] Ondatra zibethicus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目キヌゲネズミ科の動物。北アメリカに広く分布している。沼沢地、湖、河川など水辺にすみ、水生植物を主食としているが、貝類、カエル、魚類なども食べる。岸辺に巣をつくり、出入口は水中にある。頭胴長25~36センチメートル、尾長20~28センチメートル、体重1~1.8キログラム。尾は長くて扁平(へんぺい)、尾の付け根にじゃ香musk臭を放つ1対の腺(せん)があるのが名の由来で、ニオイネズミともよばれる。後ろ足の指に硬毛があり、水かきの役割を果たしている。妊娠期間22~30日。4~8月、暖地では冬にも出産し、1産1~11子。乳頭は3対。毛皮動物としてヨーロッパなどへも移入されて飼育されたが、各地で広く野生化もしている。日本でも第二次世界大戦中飼育されていたが、逃げ出したものが関東地方で野生化している。毛皮生産では旧ソ連が最大であった。

[宮尾嶽雄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マスクラット」の意味・わかりやすい解説

マスクラット
Ondatra zibethica; muskrat

齧歯目キヌゲネズミ科。ニオイネズミともいう。体長 30cm,尾長 25cm内外。体色は変異が多く黒,褐,白色などさまざまである。後肢に蹼 (みずかき) をもつ。尾はやや側扁する。後肢のつけ根にある腺から特有の臭いのある液を分泌する。泳ぎがうまく,沼や湖などに生活し,岸に巣穴を掘ったり,木の小枝などで塚をつくる。北アメリカに分布するが,比較的安価な毛皮獣として各地に移出され,日本でも関東地方南部で野生化しているといわれる。

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百科事典マイペディア 「マスクラット」の意味・わかりやすい解説

マスクラット

ニオイネズミとも。齧歯(げっし)目ネズミ科の哺乳(ほにゅう)類。体長23〜33cm,尾18〜30cm。耳介と眼は小さい。体毛は長く光沢があり,普通赤褐色だが,白色,黒色など変異が多い。原産は北米。毛皮用に養殖されていたものが,日本,ヨーロッパなどで野生化している。川や沼などの水辺に穴を掘ってすみ,スイレン,ガマ,クワイなどの水生植物の根や茎,カニ,小魚などを食べる。1腹1〜11子。堤防に穴をあけるので害獣とされる。

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世界大百科事典(旧版)内のマスクラットの言及

【帰化生物】より

… 偶然に帰化したものとしては,飼育していたものが逃げ出して定着したものに,1918年ころから食用に北アメリカから移入し,各地で養殖していたが,その一部が逃げ出して各地に野生化したウシガエル,そのウシガエルの餌として30年ころ神奈川に移入して養殖していたところ,大雨による出水で逃げ出して,付近の水田などに野生化し,しだいに各地に分布を広げたといわれる北アメリカ産のアメリカザリガニ,35年ころ食用に台湾から移入したものが,小笠原,奄美,沖縄などに野生化した,アフリカ原産のアフリカマイマイなどがある。また,愛玩用に飼育していたものが逃げ出して帰化したものに,北海道,岐阜の金華山などに野生化した韓国産のチョウセンシマリス,東京付近などに野生化したセキセイインコその他多数の飼鳥,動物園で飼育していたものが逃げ出して野生化したものに,伊豆大島,鎌倉などにすみついた台湾原産のタイワンリス,毛皮獣では第2次大戦中南アメリカから輸入し,各地で盛んに養殖していたが,その一部が逃げ出し,岡山その他に野生化したヌートリア,同じころ養殖されていたと思われ,東京の江戸川付近に定着している北アメリカ産のマスクラット,戦後毛皮獣として輸入され,養殖されていたものが逃げ出し,北海道で野生化した北アメリカ産のミンクなどがある。さらに,輸入した植物などに付着して偶然に入って来たと思われるものに,明治末に観賞用植物についてオーストラリアから入ってきたイセリアカイガラムシ,第2次大戦中に日本に入った北アメリカ原産のアメリカシロヒトリ,同じころ中国から入ったアオマツムシなどがある。…

※「マスクラット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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