マダラヘビ(読み)まだらへび(英語表記)oriental king snake

改訂新版 世界大百科事典 「マダラヘビ」の意味・わかりやすい解説

マダラヘビ (斑蛇)
Oriental king snake

ナミヘビ科マダラヘビ属Dinodonに属する無毒ヘビの総称。8種がアッサムミャンマー,インドシナの各北部地方から中国東部,台湾,朝鮮半島および日本に分布している。全長0.3~1.5mであるが,ほとんどが全長1m前後。日本には固有種のシロマダラD.orientalis本州四国,九州に,アカマタD.semicarinatus奄美・沖縄諸島に,センカクマダラD.nigrofasciatus尖閣諸島に分布するほか,中国,朝鮮半島,台湾に広く分布するアカマダラD.rufozonatus対馬,尖閣諸島に産する。アカマダラの亜種サキシママダラD.r.wall八重山列島に,ヒマラヤ東部に分布するバイカダD.septentrionalisの1亜種であるサキシマバイカダD.s.multifasciatusが八重山列島に産する。

 シロマダラはマダラヘビ属ではもっとも北に及んでいる種で,全長30~70cmの小型。体背面は淡褐色で50~60本の黒帯が並び,瞳孔縦長。低山地に多く,夜行性のおとなしいヘビで餌はトカゲや小さなヘビ。アカマタは赤褐色の背面に50~70本の幅広い黒帯が並ぶ。平地から山地の耕地森林にすみ,性質はかなり荒くてよくかみつき,ハブの幼ヘビを含むヘビ,トカゲ,カエルなどをとらえる。マッタブという地方名がある。バイカダの系統は頭胴部が細長く尾も長く,東南アジアに広く分布する近縁のオオカミヘビ属Lycodonに形態,生態ともに類似する。センカクマダラは魚釣島から見つかった種で,狭い島に競合種である同属の2種が生息することは興味深い
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マダラヘビ」の意味・わかりやすい解説

マダラヘビ
まだらへび
oriental king snake

爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目ナミヘビ科マダラヘビ属に含まれるヘビの総称。この属Dinodonの仲間は無毒で、日本をはじめ朝鮮半島、中国東部・南部およびインドシナ半島、ミャンマー(ビルマ)、アッサムの各北部地方に8種が分布している。ほとんどが全長1メートル前後で、大は約1.5メートル、小は70センチメートルほどである。日本には4種および2亜種が分布する。体背面が赤色系でよくかみつくアカマタD. semicarinatusが奄美(あまみ)・沖縄諸島に、アカマダラD. rufozonatusが対馬(つしま)、尖閣諸島(せんかくしょとう)(中国、朝鮮半島、台湾にも分布する)に、亜種であるサキシママダラD. r. walliが八重山諸島(やえやましょとう)に分布する。ほかに、小形種で細長く体背面が灰褐色系のシロマダラD. orientalisが本州、四国、九州および離島(奥尻島(おくしりとう)を含む)に、サキシマバイカダD. septentrionalis multifasciatusが八重山諸島に分布し、尖閣諸島の魚釣島(うおつりじま)からセンカクマダラD. nigrofasciatusが1982年(昭和57)に初めて記録されたが、これらをオオカミヘビ属Lycodonに含める考え方もある。狭い島に、アカマダラとセンカクマダラのような同属の競合2種が生息するのは興味深い。マダラヘビは夜行性で瞳孔(どうこう)は縦長、餌(えさ)はトカゲ、ヘビなどである。

[松井孝爾]


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