マヌエル1世(読み)マヌエルいっせい(英語表記)Manuel I Comnenus

改訂新版 世界大百科事典 「マヌエル1世」の意味・わかりやすい解説

マヌエル[1世]
Manuel Ⅰ
生没年:1469-1521

ポルトガル王。在位1495-1521年。アフォンソ5世の弟ドン・フェルナンドの子。嗣子のないいとこジョアン2世の養子となり,遺言により即位した。先王の海外進出事業を受け継ぎ,バスコ・ダ・ガマのインド航路発見(1498),カブラルによるブラジルの併合,アルメイダ,アルブケルケの活躍で,その治世下にアフリカ,アジア,新大陸にまたがる一大海洋帝国を築いた。首都リスボンはアジアの香料,アフリカの金,マデイラ島の砂糖が流入し,この富を背景に絶対王制を確立した。身分制議会コルテス召集の回数を減らし,先王によって厳しく弾圧された貴族を植民地行政に組み込んで中央集権化を進めるとともに,〈マヌエル法典〉を公布して法の統一化を図った。カスティリャ女王イサベル1世の娘イサベルとの結婚によってスペイン併合の野望を抱き,女王の意向をくんでユダヤ人を追放した(1496年12月~97年10月)。
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マヌエル[1世]
Manouēl ⅠKomnēnos
生没年:1120-80

ビザンティン帝国皇帝。在位1143-80年。ヨハネス2世の四男。親西欧的傾向をもつ一方,世界帝国の理念の実現を目ざした。シチリアのルッジェーロ王を押さえ,アンティオキア公国,ハンガリーセルビアに一時的にせよ宗主権を認めさせ,イタリアではフリードリヒ1世の南進策に精力的に対抗した。しかしアナトリアではルーム・セルジューク軍に敗れ(ミュリオケファロン。1176)大きく後退した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マヌエル1世」の意味・わかりやすい解説

マヌエル1世
マヌエルいっせい
Manuel I Comnenus

[生]1122頃
[没]1180.9.24.
ビザンチン皇帝 (在位 1143~80) 。ヨハネス2世の息子。天才的外交手腕に恵まれ,西ヨーロッパ型の君主で,ビザンチン宮廷に西欧文化を取入れた。急速に勢力を増大してきたシチリア王ロジェール2世に対抗するため,ドイツ王コンラート3世と同盟を結んだが,コンラート3世の十字軍遠征とその失敗により,1147年ロジェール2世に絹産業の中心テーベ,コリントを侵略され,商業活動の衰退を招いた。さらにジェノバ,ピサ,ベネチアに与えた貿易特権はこれに追打ちをかけた。しかし東方においては,アンチオキア公国に対する宗主権を確立し,西方においてはハンガリーの王位継承権問題を巧みにあやつって,ボスニアダルマチア,クロアチアの併合に成功した。これらの一連の動きは,セルジューク・トルコを牽制したものの,77年ミリオケファロンの戦いに敗れ,小アジアでの帝国の影響力を著しく減少させた。

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367日誕生日大事典 「マヌエル1世」の解説

マヌエル1世

生年月日:1469年5月31日
ポルトガル王(在位1495〜1521)
1521年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のマヌエル1世の言及

【大航海時代】より

…それによってベルデ岬の西370レグア(約2040km)の線を境界とし,その西側で発見された土地はスペインの,その東側で発見された土地はポルトガルの領土とすることとされた。ポルトガルでは97年マヌエル王の指揮下にバスコ・ダ・ガマの船隊が編成され,インドに派遣された。ガマの船隊は98年にインドのカリカットに到着し,99年にコショウを積んで帰国した。…

【ポルトガル】より

…ロマネスクでは巡礼路様式のコインブラ旧大聖堂(1184),ゴシックへの移行期のシトー会様式ではアルコバーサAlcobaçaのサンタ・マリア修道院(1222)が,ゴシックではバターリャ・サンタ・マリア・ダ・ビトリア修道院(15世紀)が傑出している。この国の建築が偉大な個性を発揮したのは大航海時代で,時の王マヌエル1世(在位1495‐1521)にちなむマヌエル様式と呼ばれる建築様式が生まれた。これは晩期ゴシックからルネサンスにかけて,船具,海産物などのモティーフや植物的モティーフを多用した過剰装飾様式で,全土に広がったが,トマールTomarのキリスト修道院の窓,リスボン近郊ベレンBelémの塔とジェロニモス修道院が代表作とされる。…

※「マヌエル1世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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