日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
マリス(Kary Banks Mullis)
まりす
Kary Banks Mullis
(1944―2019)
アメリカの生化学者。ノース・カロライナ州生まれ。ジョージア工科大学を卒業し、1973年にカリフォルニア大学バークリー校で生化学の博士号を取得。カンザス医科大学、カリフォルニア大学での研究を経て、1979年バイオテクノロジー企業のシータス社にエンジニアとして入社する。1988年からザイトロニクス社(カリフォルニア)で分子生物学部長。その後、数々の核酸化学分野の企業コンサルタントを務め、バースタイン・テクノロジー副社長となる。シータス社在籍時、遺伝子診断のための研究の一端として、微量DNA(デオキシリボ核酸)からその塩基配列を決定する方法を探索。1986年に、熱耐性DNAポリメラーゼを用いて鋳型となるDNAを複製させては加熱して、2本鎖DNAをほどく行程を繰り返すことによって、微量のDNAでも、簡便かつ効率よく増幅できるPCR法(polymerase chain reaction)を開発した。この方法は、遺伝病やエイズをはじめとする病気の診断や犯罪捜査などに幅広く応用されている。この功績により1993年、オリゴヌクレオチドを利用した突然変異法を開発したM・スミスとともにノーベル化学賞を受賞した。
[馬場錬成]
『キャリー・マリス著、福岡伸一訳『マリス博士の奇想天外な人生』(2000・早川書房)』