日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
マルタ(フロトーのオペラ)
まるた
Martha, oder Der Markt zu Richmond
ドイツの作曲家フロトーのオペラ。全四幕。サン・ジョルジュ作のバレエに基づいてウィルヘルム・フリードリヒ・リーゼが改作した台本による。「リッチモンドの市場」の別名をもつこのオペラは、18世紀初頭のイギリスを舞台に、出稼ぎ娘が奉公先を求めて集まる「娘市場」に、遊び半分で出かけた宮廷の女官とその友人が、彼女らを奉公人として雇い入れてしまった2人の農村の若者と恋に落ち、身分の違いを乗り越えて結ばれるというもの。全編が親しみやすく美しい旋律に満ち、アイルランド民謡「夏の名残(なごり)のバラ」(庭の千草(ちぐさ))の二重唱をはじめ聴きどころが多い。1847年のウィーンにおける初演は大成功で、その後ヨーロッパ各地で数多く上演された。日本初演は1953年(昭和28)二期会。
[三宅幸夫]