マレー(Joseph E. Murray)(読み)まれー(英語表記)Joseph E. Murray

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

マレー(Joseph E. Murray)
まれー
Joseph E. Murray
(1919―2012)

アメリカの外科医。マサチューセッツ州ミルフォード生まれ。1940年ホーリー・クロス大学を卒業。1943年にハーバード大学医学部を卒業後、ピーター・ベント・ブリガム病院(のちにブリガム婦人病院)で9か月の研修軍医としてペンシルベニアのバレー・フォージ総合病院(VFGH:Valley Forge General Hospital)で3年間勤務。1947年ピーター・ベント・ブリガム病院に戻る。1964~1986年同病院形成外科部長。1972~1985年ボストン小児医療センター形成外科部長。1962年ハーバード大学準教授、1970年同教授。

 第二次世界大戦中、軍医として戦傷者の皮膚移植を行い、一時的に定着した他人皮膚に徐々に拒絶反応がおこることに興味をもつ。1937年にVFGH外科部長のブラウンJames Barrett Brown(1899―1971)大佐が一卵性双生児間で皮膚の交換移植実験を行い成功しているが、この実験に影響を受けたマレー臓器移植研究に取り組み、イヌ腎臓(じんぞう)の移植実験を経て、1954年に一卵性双生児の兄弟間での腎臓移植腎移植)を試み、拒絶反応をおこすことなく成功。1962年には免疫抑制剤を投与することで、血縁のない提供者、および死体からの腎臓移植に成功する。研究開始当時、研究者の間では臓器移植は不可能だと思われていたが、その拒絶反応の抑制を理論的、実践的に示し臓器移植を治療法として確立した。この功績が評価されて1990年、ノーベル医学生理学賞を受賞した。骨髄移植に成功したD・トーマスとの共同受賞である。

[馬場錬成]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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