マンジュウガニ(読み)まんじゅうがに

改訂新版 世界大百科事典 「マンジュウガニ」の意味・わかりやすい解説

マンジュウガニ (饅頭蟹)

十脚目オウギガニ科マンジュウガニ属Atergatis甲殻類総称。かつてはカラッパ科のカニ類もマンジュウガニと呼ばれていたが,両者を区別するためにそれぞれカラッパとマンジュウガニを基本名とし,それに形容詞をつけて種名とするようになった。両者ともやや横長の甲が丸く盛り上がっており,マンジュウガニの和名がよくあてはまる。

 マンジュウガニ類のうちもっとも目にするのは各地岩礁に多いスベスベマンジュウガニA.floridusである。甲幅5cmほどで,紫褐色の地にレース編みのような白色の雲紋模様がある。インド洋まで広く分布しているが,日本近海のものは筋肉中におそらく食物に由来すると思われる毒を蓄えており,食べるのは危険である。麻痺性の毒であって,煮ても焼いても毒性の強さには変化がない。甲幅10cmほどで,橙赤色のアカマンジュウガニA.subdentatusは日本固有種で,相模湾から九州沿岸までの浅海にすむ。甲の前側縁が丸く湾曲し,後側縁との境が丸い。やはり大型のホシマンジュウガニA.integerrimusはインド洋まで広く分布し,アカマンジュウガニに似ているが,甲の前側縁と後側縁の境が丸いほか,甲面の前半部に黄色の小さなくぼみが多数ある。甲面やはさみ脚に横しわが多いヘリトリマンジュウガニA.reticulatusも各地にふつうであるが,分布は日本と韓国に限られている。これらはいずれも浅海の岩場にすみ,イセエビ用の刺網にかかることが多い。夏に産卵する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンジュウガニ」の意味・わかりやすい解説

マンジュウガニ
まんじゅうがに / 饅頭蟹

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目オウギガニ科マンジュウガニ属Atergatisのカニ類の総称。いずれも甲の輪郭は横長の楕円(だえん)形で、前側縁は丸みを帯び、明瞭(めいりょう)な歯はない。甲面が滑らかな種が多く、甲域は不明瞭である。岩礁の潮間帯から水深30メートルくらいまでの深さにすみ、西太平洋からインド洋西部まで広く分布する種が多い。各地の磯(いそ)でもっとも普通にみられるのは、甲幅5センチメートルほどのスベスベマンジュウガニA. floridusで、紫褐色の地に白色のレース模様をもつ。この模様は個体ごとに異なるが、どの個体でも左右相称である。やや小形であることから食用とすることはほとんどないが、有毒ガニとして有名。毒性はフグ毒に近い麻痺(まひ)性毒であるが、毒源は餌(えさ)にあると考えられる。甲幅10センチメートルほどの橙赤(とうせき)色のアカマンジュウガニA. subdentatusは日本固有種で、相模(さがみ)湾から九州沿岸までの浅海にすみ、イセエビ用の刺網によくかかる。近縁種のホシマンジュウガニA. integerrimusはインド西太平洋およびインド洋海域に広く分布し、甲の前半部に黄色のあばた状斑点(はんてん)が多数ある。甲面が横しわのために粗面を呈するヘリトリマンジュウガニA. reticulatusは、日本近海の浅海岩礁にごく普通に生息する。

武田正倫]


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百科事典マイペディア 「マンジュウガニ」の意味・わかりやすい解説

マンジュウガニ

オウギガニ科マンジュウガニ属の甲殻類の総称。岩礁性の中型のカニ。アカマンジュウガニは全体濃赤色で,はさみ脚の指節だけが黒色。甲長6cm,甲幅10cmくらい。甲は横に広い丸みのある角形で,前側縁はひだをなし,歩脚は平たい。日本固有種で,相模湾から九州沿岸までの日本各地の浅海に分布。スベスベマンジュウガニは甲幅5cm,紫褐色の地にレース編みのような白色の雲紋模様がある。インド洋まで広く分布している。

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世界大百科事典(旧版)内のマンジュウガニの言及

【カラッパ】より

…甲殻綱カラッパ科Calappidaeに属するカニ類の総称。古くはマンジュウガニと呼ばれていたが,オウギガニ科の中にそう呼ばれる一群があるため,属名のCalappaをそのまま和名としている。日本には10種いるが,濃紫色の虎斑模様をもつトラフカラッパC.lophos(イラスト)(甲幅10cm),両方の眼窩(がんか)が黒く縁取られているメガネカラッパC.philargius(甲幅8cm),一面に赤紫色のいぼ状突起があるヤマトカラッパC.japonica(甲幅15cm),甲の左右の張出しが丸いマルソデカラッパC.calappa(甲幅12cm),サンゴ礁の砂地にすみ,じみな色彩のソデカラッパC.hepatica(甲幅8cm)がかなりふつうに見られる。…

※「マンジュウガニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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