日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミシュテカ」の意味・わかりやすい解説
ミシュテカ
みしゅてか
Mixteca
メキシコ南部、オアハカ州北西部を中心にプエブラ州、ゲレロ州にかけて居住する民族集団。言語はオト・マンゲ語群ミシュテカ語族に属すが、多くの方言に分かれ互いに理解不能な場合もある。5歳以上の人口は約23万人(1970)。
地域的には、標高約1700メートルを境とする高地と低地、太平洋海岸部の三つに分けられ、自然環境の差が歴史・文化的相違を生んでいる。民族の起源はかならずしも明らかでないが、考古学的にはメキシコ中央高原から南下したと考えられ、高地地域で社会統合が進んだ。15世紀にアステカの侵入を受け、1520年からのスペイン人の征服に際しては、敵対派と同盟派が存在した。基本生業はトウモロコシ、豆、小麦を中心とする農業で、ほかに低地ではサトウキビ、ラッカセイ、海岸部では果実、綿などをつくる。地域により核家族、拡大家族ともみられ、社会関係ではコンパドラスゴ(儀礼的親族)関係が重要である。伝統的な政治・宗教組織のうち、集落の警護にあたる奉仕職は現在も残っている。キリスト教聖人の祭りが盛んだが、アニミズム的世界観も知られている。近年はおもに土壌侵食のため農業生産が振るわず、メキシコ内でももっとも人口流出の激しい地方になっている。
[石井 紀]