ミズバチ(読み)みずばち

改訂新版 世界大百科事典 「ミズバチ」の意味・わかりやすい解説

ミズバチ (水蜂)
Agriotypus gracilis

膜翅目ヒメバチ科の昆虫。体長6~7mm。黒褐色で全身があつい短毛でおおわれ,胸部の背面中央に後に向かって突出するとげがある。北海道,本州から知られており,湖沼渓流のあぜでしばしば採集される。水生のトビケラ類幼虫に寄生する。雌の成虫は,翅をたたんで水中に入り,水底の石面などに付着しているトビケラ幼虫の巣内に侵入し,これに産卵する。孵化(ふか)した幼虫はトビケラの幼虫を食べて成長し,その巣内で繭をつむぎ,蛹化(ようか)する。このハチに寄生されたトビケラの巣には長さ5cm内外の片面が白色,もう一面が黒っぽいリボンのような付属物がついていて,水の流れにのってゆらゆらと漂い,特徴的なのですぐわかる。このリボンは前蛹やさなぎの呼吸に際し,酸素を供給するといわれている。同属には同じような生活をしている種類が世界に3種いて,日本産のこの種以外に,ヨーロッパに1種,ヒマラヤ地区に1種産する。なお,ミズバチ属は独立してミズバチ科Agriotypidaeとして扱われることもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズバチ」の意味・わかりやすい解説

ミズバチ
みずばち / 水蜂

昆虫綱膜翅(まくし)目ヒメバチ科のミズバチ属Agriotypusに属する寄生バチ。日本に1種、ヨーロッパに1種、ヒマラヤ地方に1種、計3種が知られている。体長6~7ミリメートル。体は黒褐色で、全身が短毛に覆われ、胸部の背面中央に棘(きょく)状の突起がある。山間地の湖沼や渓流の岸辺でよくみかける。水生のトビケラ類の幼虫や前蛹(ぜんよう)に寄生する。雌バチは水草や岩を伝わって水面下に侵入し、水底の石などに固着しているトビケラの巣内の寄主に産卵する。孵化(ふか)した幼虫は、寄主の繭内で成長し、繭をつくって蛹化する。このハチに寄生されたトビケラの巣には、おそらく寄生者の呼吸用と推定される長さ5センチメートル内外で片面が白色のリボンが付着して、水の流れに漂っている。

[桃井節也]

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