ミノス(英語表記)Minos

翻訳|Minos

精選版 日本国語大辞典 「ミノス」の意味・読み・例文・類語

ミノス

(Minōs) クレタ島伝説的な王。ゼウスエウロペの子。立法者としてクレタ島を治め、死後、死者の国の裁判官となった。

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デジタル大辞泉 「ミノス」の意味・読み・例文・類語

ミノス(Mīnōs)

ギリシャ神話で、クレタ島の王。ゼウスエウロペの子。法を制定し、善政をしき、死後冥府の判官となった。ダイダロスに命じて迷宮を造らせ、妃の生んだ怪物ミノタウロスを閉じ込めた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミノス」の意味・わかりやすい解説

ミノス
Minos

ギリシア神話のクレタ王。ゼウスとエウロペの子で,エウロペと結婚したクレタ王アステリオンによって育てられ,その王位を継いだ。このとき彼の兄弟のラダマンチュスサルペドンも継承権を主張したが,ミノスはポセイドンに祈り,海から雄牛を出現させてもらって,自分が王になるのが神意にかなうことを証明してみせた。ところが彼は,ポセイドンとの約束に違反し,この雄牛をいけにえにせず,飼い続けたために神罰を受け,ミノスのパシファエがこの牛に恋するようになり,アテネから来てミノスの宮廷に逗留していたダイダロスの助けをかりて欲望をとげ,牛頭の怪物ミノタウロスを生んだ。ミノスはダイダロスに命じ,迷宮を造らせてその中にミノタウロスを閉じ込める一方で,息子のアンドロゲオスが,アテネで催された競技に参加したあと殺害されたことを罰するため,アテネを攻めて降伏させ,この市から毎年7人ずつの若者と娘たちを貢物として送らせ,ミノタウロスのえじきにすることにした。ミノタウロスがテセウスに退治されると,ミノスは,彼の娘アリアドネに頼まれ迷宮から脱出する方法をテセウスに教えたかどで,ダイダロスを息子のイカロスとともに迷宮に幽閉した。ダイダロスが人工の翼をつくってそこから脱出すると,行くえをたずねて,シチリア島コカロス王のところにいるのを突止め,みずから引渡しを求めに行ったが,コカロスにだまされ,その娘たちに浴槽の中で煮殺された。しかし生前ゼウスとも親交のあった彼は,冥府で死者を裁く法廷の判事に任じられ,ラダマンチュスおよびアイアコスとともにこの役を果しているという。ミノスの神話には明らかに,ミケーネ文明に強い影響を与えた,クレタ島のミノア文明栄華の記憶が反映している。

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改訂新版 世界大百科事典 「ミノス」の意味・わかりやすい解説

ミノス
Minōs

ギリシア伝説のクレタ王。ゼウスとエウロペの子。妃パシファエPasiphaēとの間にアリアドネAriadnē,ファイドラPhaidra,アンドロゲオスAndrogeōsらをもうけた。海神ポセイドンに祈って雄牛を海中から出現させてもらったお蔭で王位につけたにもかかわらず,約束に反してその牛を海神に捧げなかったため,海神はパシファエが雄牛に恋するように仕向け,その交わりから人身牛頭の怪物ミノタウロスが生まれた。彼はこの怪物を名匠ダイダロスに造らせた迷宮ラビュリントスに閉じ込め,息子アンドロゲオス殺害の償いとして毎年アテナイから送られる14人の少年少女を餌に与えていたが,怪物はやがてアテナイの王子テセウスに退治され,またダイダロスは人工の翼によって空からクレタ島を脱出したので,そのあとを追ってシチリア島に行き,同地の王コカロスKōkalosに殺されたという。以上はおもにアッティカ地方の伝承であるが,これとは別に,彼は最古の海軍の組織者で,海賊を平らげてエーゲ海全域を支配する一方,クレタ島に法を与えて善政を布いたので,同じく有名な立法者であった弟のラダマンテュスRhadamanthys,敬虔をもって知られた英雄アイアコスAiakosとともに,死後,冥界の裁判官になったとする伝承もあり,いずれも,かすかながら,彼の名にちなんでミノス文明とも呼ばれる先史時代のクレタ文明の最盛期の記憶をとどめるものと考えられている。なお,ミノスの名は王朝名または王の称号であったかもしれない。
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百科事典マイペディア 「ミノス」の意味・わかりやすい解説

ミノス

ギリシア伝説のクレタ王。ゼウスとエウロペの子。ヘリオスの娘パシファエを妃とし,アリアドネファイドラなどをもうける。ポセイドンが送った白牛を妃が愛し,ダイダロスの助力で怪物ミノタウロスを産む。王はアテナイ市に強制して毎年少年少女各7人を送らせ怪獣の餌にしたが,怪物はテセウスに倒された。死後,ラダマンテュス,アイアコスとともに冥界の裁判官になったとも。なお,〈ミノス文明〉は同王にちなむ命名。
→関連項目イドメネウスラダマンテュス

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旺文社世界史事典 三訂版 「ミノス」の解説

ミノス
Minos

エーゲ海にあるクレタ島の伝説上の王
クノッソスに王城をもっていたといわれる。ギリシア神話では,ゼウスとエウロペの子で,その妃が牛と通じて牛頭人身の怪物ミノタウロスを生んだとされる。ミノタウロスはギリシアに少年少女の犠牲を求め,英雄テセウスによって退治された。この伝説は,いわゆるクレタ文明の中心となった強力な王権を伝えている。

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世界大百科事典(旧版)内のミノスの言及

【エウロペ】より

…浜辺で侍女たちとたわむれていたとき,白い雄牛となって近づいたゼウスにだまされ,その背に乗ったまま,海を渡ってクレタ島へ運ばれた。彼女はこの島でゼウスと交わって,ミノス(のちのクレタ王),ラダマンテュス(死後冥府の裁判官となった),サルペドン(のちのリュキア王)の3子を生んだ。その後,クレタ王アステリオスの妃となり,死後は女神としてあがめられた。…

【ギリシア神話】より

…ゼウスは人間の女との間にも多数の子をもうける。主要なものだけを挙げれば,テーバイの王女セメレSemelēによりディオニュソスを,アルクメネAlkmēnēによりヘラクレス,ダナエDanaēによりペルセウス,エウロペによりミノスを得た。それぞれの場合につき細目と関与者を特徴づける物語が語られている。…

【星】より

…しかし星座の起源についての説明は,ギリシア神話のなかでもつねに一定しているわけではない。たとえばおうし座は一説によれば,フェニキアの王女エウロペをゼウスの愛人にするために背に乗せて海を渡り,クレタ島まで運んだ牛が天にあげられたものだが,別の伝承によれば,クレタ王ミノスの祈りにこたえて,海神ポセイドンが海から出現させた牛である。ミノスの妃パシファエがこの牛に恋し,名工ダイダロスにつくらせた本物そっくりの牝牛の模型の中に入って,その牛の種を受けて半牛半人の怪物ミノタウロスを生んだという。…

※「ミノス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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