ミヘル(読み)みへる(英語表記)Hartmut Michel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミヘル」の意味・わかりやすい解説

ミヘル
みへる
Hartmut Michel
(1948― )

ドイツの化学者。ルートウィヒスブルクに生まれる。チュービンゲン大学生化学を学び、1974年に卒業、ウュルツブルク大学に進み、1977年に博士号を取得、同大学の研究員となり、ケンブリッジ大学に留学した。1979年マックス・プランク生化学研究所に入所、1987年マックス・プランク生物物理学研究所長に就任した。

 ミヘルは、大学時代から光合成の研究に携わってきたが、その研究は、光合成細菌を用いて、光合成反応中心物質を結晶化するものであった。マックス・プランク生化学研究所に移ったのちも、彼はこの研究に取り組み、1982年に光合成細菌の一種であるロドプソイドモナス・ビリディスRhodopseudomonas viridisから、光合成反応中心物質の結晶を取り出すことに成功した。さらに、同研究所のフーバーダイゼンホーファーと共同研究を行い、X線結晶解析によって、光合成反応中心物質の三次元構造を解明した。この業績により、ミヘルはフーバーおよびダイゼンホーファーとともに1988年のノーベル化学賞を受賞した。

[編集部]

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化学辞典 第2版 「ミヘル」の解説

ミヘル
ミヘル
Michel, Hartmut

ドイツの生化学者.チュービンゲン大学で生化学を学び,ビュルツブルク大学のD. Oesterheltのもとで膜タンパク質を研究し,1977年学位を取得.その後も同大学でバクテリオロドプシンの研究を続けた.1979年よりマックス・プランク協会生化学研究所に移り,1980年ケンブリッジの医学研究会議(MRC)分子生物学研究室で,X線結晶学を学ぶ.1981年光合成細菌Rhodopseudomonas viridisの光合成反応中心複合体である膜タンパク質の結晶化に成功.翌年よりこの複合体のX線解析に取り組み,R. Huber(フーバー)やJ. Deisenhofer(ダイゼンホーファー)らと協力して,その三次元構造を決定した.これらの研究により,光合成反応における電子伝達機構が解明された.1987年よりマックス・プランク協会生物物理学研究所分子膜生物学部部長となり,1988年Huber,Deisenhoferとともにノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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