メリエ(英語表記)Jean Meslier

デジタル大辞泉 「メリエ」の意味・読み・例文・類語

メリエ(Jean Meslier)

1664~1729]フランスの司祭・思想家絶対王政服従を説く教会告発無神論唯物論社会主義をつづった覚え書遺言」を遺したといわれる。のち、ボルテールによって刊行された「メリエの遺言抄」は啓蒙思想先駆をなした。

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精選版 日本国語大辞典 「メリエ」の意味・読み・例文・類語

メリエ

(Jean Meslier ジャン━) フランス啓蒙思想先駆者。北フランスの司祭。唯物論的な社会主義を唱え、既成宗教や貴族制度に強く反対死後三通の遺言をもとに「ジャン=メリエの遺言抄」が刊行された。(一六六四‐一七二九

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改訂新版 世界大百科事典 「メリエ」の意味・わかりやすい解説

メリエ
Jean Meslier
生没年:1664-1729

フランスの司祭,社会思想家。シャンパーニュ地方の小村の生まれ。父親は農業と毛織物業を併せ営み,商人も兼ねた富農であった。早くより読み書きを習い,近くの村の司祭についてラテン語も学んだ。長じてランスの神学校に学んだのち,1689年24歳のときより死に至るまでの約40年間,生れ故郷に近い小村エトレピニーの司祭として生涯を終えた。領主や国王役人の権威にも屈しない一徹な司祭として,教区民の信望を集めたが,その間ひそかに書き残された大部の手記が死後発見され,時代に先んじた急進的な社会思想家として知られるところとなった。執筆は1719-29年ころと推定されるこの《覚書Mémoire des pensées et sentiments de Jean Meslier》において,メリエ司祭は,キリスト教の教義にみられる矛盾を鋭く指摘し,創造主としての神の存在を否認する無神論の立場を表明すると同時に,社会の不平等を告発し,民衆による圧制の打倒を呼びかけるという急進的な思想を提示していた。彼の手記は写本の形で流布したが,61年ボルテールによりその抜粋が印刷刊行されて広く世に知られるところとなった。ドルバックやシルバン・マレシャルら,18世紀後半の宗教批判に与えた影響は大きい。1864年アムステルダムで《覚書》の完本が《ジャン・メリエ遺言集》と題して刊行されたが,近年新たに《著作集》の批判版全3巻(1970-72)も完結して,ルイ14世時代に生きた神を信じぬ司祭に関心が高まっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メリエ」の意味・わかりやすい解説

メリエ
めりえ
Jean Meslier
(1664―1729)

フランスの司祭、思想家。ランス北東、アルデンヌ県の小村マゼルニーに生まれる。20歳でランスの神学校に入学。卒業後、生村に近いエトレピニーとバレーブの主任司祭に任じられ、生涯をその地に過ごす。死後まもなく、司祭自らが晩年に綴(つづ)った手稿が発見される。『覚え書』と題されたこの遺著は全編激しい怒りに満ちた政治批判、宗教批判の書であった。メリエは悲惨な生活を強いられていた民衆への共感を述べることから書き起こし、社会的不平等や支配者の圧政を告発し、「神権政治」の支柱であったキリスト教に対してもその教義や支配者への服従を説く道徳の欺瞞(ぎまん)を暴露して無神論、唯物論を対置し、「民衆よ、心あらば団結せよ」と呼びかけ、アンシャン・レジームの打倒を促した。『覚え書』はやがてその一部あるいは全部が写本として流布し始め、1762年ボルテールがその一部を『ジャン・メリエの遺言書』として出版するに及び広くその存在が知られることとなる。思想表現の自由のない18世紀、メリエの『覚え書』は語りえなかった自らの良心を綴った書としてダランベールなどの啓蒙(けいもう)思想家に影響を与えるとともにその急進的な思想はドルバックなどの宗教批判や唯物論の素地ともなった。

[石川光一 2017年12月12日]

『杉捷夫訳『遺言書』(『フランス唯物論哲学』所収・1931・中央公論社)』『石川光一「無神論への軌跡――ジャン・メリエの『覚え書』、その論理構成について」(『思想』第759号所収・1987・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メリエ」の意味・わかりやすい解説

メリエ
Meslier, Jean

[生]1664. レテル,マゼルニー
[没]1729. エトレピニー
フランスの聖職者,自由主義者。 1689年から終生シャンパーニュ地方の村の敬虔な司祭をつとめたが,遺稿の『遺言状』には無神論的革命思想が展開されている。宗教は統治の具であるとし,特にキリスト教についてはその教理を詳細に批判した。

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