精選版 日本国語大辞典 「メーザー」の意味・読み・例文・類語
メーザー
メーザー
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microwave amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をとって作られた語。アメリカのタウンズCharles Hard Townes(1915- )の命名といわれる。物質と電磁波との相互作用における誘導放出を利用したマイクロ波の増幅や発振,あるいはそのための装置をいう。microwaveのmをlightのlにかえたのがレーザーで,両者はまったく同一の原理に基礎をおいている。
共鳴した電磁波の強度に比例した確率で,励起状態にある原子や分子からの電磁波の放出が誘発される過程(誘導放出)の存在は,はやくからアインシュタイン(1917ころ)によって予言されていた。電磁波が可視光である場合には単一モードの電磁波の強度を十分に強くできないこと,励起状態の原子・分子の数が極端に少ないことなどのために,この過程は長いこと検知されないままになっていたが,第2次大戦中および戦後のマイクロ波技術の発達によりマイクロ波分光が可能になって検出された。さらにタウンズらは,励起状態の分子だけを集める特殊な装置を考案し,誘導吸収に打ち勝って誘導放出過程のみを起こさせることに成功した(1954)。この装置によれば,弱いマイクロ波を〈たね〉として,ねずみ算的な電磁波の増幅ができ,その結果得られるマイクロ波は,電子管などによって得られるものよりはるかに良質のものとなる。メーザーには動作物質に気体を用いる気体メーザーと,固体を用いる固体メーザーとがある。前者は発振周波数がきわめて安定で,高精度,高分解能の実験や時間標準などにアンモニアメーザーや水素メーザーが利用されている。固体メーザーの場合は,遷移元素イオンを不純物として含むルビーなどの常磁性結晶が動作物質として用いられ,低雑音マイクロ波増幅器として利用されている。なお,宇宙空間など自然界でもメーザー作用が起こるようであり,いくつかの分子のスペクトルについて,非常に強力なマイクロ波が電波天文学の分野で検出されている。メーザーのアイデアはやがて振動数のもっと高い光領域に拡張され,レーザーとしてめざましい発展をとげることになる。
→レーザー
執筆者:清水 忠雄
ドイツ北部の町オスナブリュックの文筆家,政治家。イェーナとゲッティンゲンの大学で学んだのち,1742年にオスナブリュックの騎士階層の団体の書記となり,そののち弁護士となる。47年にはオスナブリュックの内政・外政にわたる法律問題の全権をゆだねられた。68年以後は全ラントの統治をゆだねられ,有能な政治家として活躍した。1766年以後《オスナブリュッカー・インテリゲンツブラット》(週刊)を発行し,ほぼ同じころに《愛国的幻想》を編んだ(全4巻,1775-86)。また従来の歴史叙述が王侯・貴族のみを扱っていたのに対し,メーザーは農民や手工業者に注目して,経済史の叙述を試みた。《オスナブリュック史Osnabrückische Geschichte》(1,2巻,1768。3巻,1824)は一小都市を扱いながらも全ドイツ史を展望する社会・経済史叙述の試みであった。近代の社会構造史研究の先駆者ともいえる。農民の共同体のなかに自由人の真のあり方をみるメーザーの方法は,伝統を重んずる歴史主義の基礎を築き,政治的には保守主義に傾斜していった。フリードリヒ大王にささげられた《ドイツの言語と文学について》(1781)によってメーザーは言語学や文学においても独特な地位を占めている。
執筆者:阿部 謹也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
電磁波の誘導放出を利用して,電磁波の増幅,発振を行う装置.本来はマイクロ波の増幅あるいは発振を行わせるための装置として考案されたものであり,メーザー(MASER)という名前もmicrowave amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をとったものである.その後,波長範囲が広がり,ラジオ波や光の領域にまで及び,光のときにはレーザーとよばれるようになった.増幅,発振に必要な負温度の状態を得る方法としては,電磁波を用いるポンピング,分子線を用いエネルギーの高いほうの準位にある原子または分子のみを選択する方法,磁場を急速に反転する方法,あるいは光を用いるポンピングなどがある.おもに原子・分子の超微細構造準位間の遷移,あるいは磁場のなかに置かれた常磁性物質のゼーマン準位間の遷移が用いられている.大別すると,分子線を用いるビームメーザーと常磁性物質を用いる常磁性メーザーとがおもなものである.有名なものとしては,はじめてメーザーとして成功したアンモニアビームメーザー,H原子,Cs原子を用いるビームメーザー,あるいはルビーや,そのほかの常磁性物質(Cr3+,Fe3+,Cd3+)を低温で用いる常磁性メーザーがある.メーザーの重要な性質は,その発振周波数を高い精度で安定化することが可能な点と,増幅器として用いたときに低雑音であることである.その性質のうち,前者は電波の周波数標準あるいは原子時計に応用され,また後者はマイクロ波のとくに低雑音を必要とする受信器の初段増幅器に用いられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
1720~94
18世紀ドイツ,オスナブリュックの法律家,歴史思想家。『オスナブリュック史』(1768年)や『愛国の幻想』(1774年)を著し,現在の社会が過去から歴史的に形成されたものであることを説き,ドイツの歴史主義的思考に強い影響を与えた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…しかし17世紀にいたるまで,この町はほとんど帝国直属都市と同じような位置をもちつづけることができた。18世紀の後半にはJ.メーザーが事実上この町の行政の責任者となり,その体験のなかから《愛国者の幻想》や《オスナブリュック史》が生まれた。19世紀にはシュテューベCarl Bertram Stüve(1798‐1872)が市長となり,ハノーファー地区の農民解放に尽くし,メーザーの《オスナブリュック史》の後編を書いている。…
…低いエネルギー状態(エネルギー準位)にある分子(あるいは原子,イオン)の数より高いエネルギー状態にある分子の数のほうが多いという非熱平衡分布(反転分布)をしている物質系に,共鳴する光を作用させて,誘導放出過程によって,コヒーレントな光の増幅を起こさせることおよびそのための装置をいう。lightをmicrowave(マイクロ波)におきかえたメーザーmaserと同じ原理に基づく。
[原理]
分子(または原子,イオン)から電磁波(光もマイクロ波もその一種)が放射される機構は,自然放出と誘導放出の二つに大別される。…
※「メーザー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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