モグリウミツバメ(読み)もぐりうみつばめ(英語表記)diving petrel

改訂新版 世界大百科事典 「モグリウミツバメ」の意味・わかりやすい解説

モグリウミツバメ (潜海燕)
diving-petrel

ミズナギドリ目モグリウミツバメ科Pelecanoididaeの鳥の総称。一見ウミスズメに似た小型の海鳥。この科はペルーモグリウミツバメPelecanoides garnotiヒメモグリウミツバメP.georgicusマゼランモグリウミツバメP.magellani,(ハシボソ)モグリウミツバメP.urinatorの1属4種よりなる。全長15~25cm。羽色は背面は黒く,下面が白い。亜南極圏の寒冷海域を中心に生息するが,1種はペルー沿岸まで分布している。ミズナギドリ目のなかでは,飛翔(ひしよう)力を発達させたミズナギドリ類とは異なって,潜水能力を発達させたグループである。ウミスズメ類との類似は,類縁関係によるのではなく,北半球と南半球とに分かれて同じ生態学的地位を占めた結果である。

 ウミスズメ類と同様に,飛ぶことはできるが飛翔力は強くない。もっぱら遊泳ないし潜水して,沿岸性の甲殻類プランクトンやイカ,小魚類をとらえる。南アメリカの太平洋岸や南極近海の島で集団繁殖する。巣は地中に深い穴を掘ってつくり,そこに1腹1個の卵を産む。抱卵育雛(いくすう)は雌雄交替で行い,とらえた餌をのどぶくろにためて,夜間,巣に戻って雛に給餌する。雛は約8週間で巣立つ。食糧の少ない亜南極圏の孤島では,モグリウミツバメとその雛や卵は,他の海鳥類以外に,漁師の食糧としても利用されることがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モグリウミツバメ」の意味・わかりやすい解説

モグリウミツバメ
Pelecanoididae; diving petrels

ミズナギドリ目モグリウミツバメ科の鳥の総称。4種からなり,全長 18~23cm。背面は褐色を帯びる黒色,腹面はくすんだ白色。ミズナギドリ目のほかの科,すなわちアホウドリ科ミズナギドリ科,ウミツバメ科は,飛翔力に優れ,おもに海面で魚類やイカ類をくわえるか,飛び込んでから潜水して採食するが,本科の鳥は,最初から潜水して採食する方向に適応,進化したグループである。したがっては短めで,潜水に適した体形をしている。4種とも集団で繁殖し,地面に穴を掘ってその奥に 1卵を産む。最も北に分布する種はペルーモグリウミツバメ Pelecanoides garnotii で,ほかの 3種はすべて南半球の高緯度海域に分布している。なお,オーストラリア東南部,タスマニア島ニュージーランドサウスジョージア島フォークランド諸島などに繁殖する P. urinatrix和名を科名と同じモグリウミツバメという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モグリウミツバメ」の意味・わかりやすい解説

モグリウミツバメ
もぐりうみつばめ / 潜水海燕
diving petrel

広義には鳥綱ミズナギドリ目モグリウミツバメ科に属する海鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Pelecanoididaeの仲間は小形で、全長約19~22センチメートル。南半球の寒冷海域沿岸にすみ、飛翔(ひしょう)性のミズナギドリ類とは別に、潜水採餌(さいじ)の方向に進化した、4種からなる小さなグループである。北半球で小形ウミスズメ類が占めている生態学的位置を南半球で占め、形態や生態、行動などに相似性の認められる現象(収斂現象(しゅうれんげんしょう))がみられる。集団繁殖し、島の地中に深い穴を掘り、そこに1卵を産む。沿海性の甲殻類プランクトンやイカ、小魚類をとらえ、夜、巣に帰ってくる。全長約22センチメートルの種のモグリウミツバメPelecanoides urinatrixのほか、ペルーモグリウミツバメP. garnoti、マゼランモグリウミツバメP. magellani、ヒメモグリウミツバメP. georgicusがある。

長谷川博]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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