モズモドキ(読み)もずもどき(英語表記)vireo

翻訳|vireo

改訂新版 世界大百科事典 「モズモドキ」の意味・わかりやすい解説

モズモドキ (擬鵙)
vireo

スズメ目モズモドキ科Vireonidaeの鳥の総称。この科には,典型的なモズモドキ類のほかに,カラシモズCyclarhis2種およびミドリモズVireolanius3種の仲間も含まれ,4属約44種に分類される。全長10~18cm。羽色はさまざまだが,多くの種は背面灰緑色ないしオリーブ色,下面が黄色ないし白色である。種によっては栗色の胸帯や赤褐色の頭頂をもち,かなりはでな色をしている。この科の特徴の一つとして,くちばしは比較的じょうぶで,先端が少しかぎ状に曲がる。南・北アメリカに分布するが,アメリカ合衆国,中央アメリカ,西インド諸島に生息する種が多く,北アメリカで繁殖する種は大部分メキシコ以南で越冬する。しかし,熱帯地方のものは留鳥である。

 開けた林や低木林にすみ,枝から枝へ活発に動きながら昆虫類をさがして食べている。一部の種は果物も好む。繁殖期以外は小群をつくり,しばしば異なった種よりなる混群で生活している。巣は深いわん形で,ふつうはメジロの巣のように,水平な枝のまたの下に釣り下げられている。卵は白っぽい地に小斑が密にあり,1腹2~5個を産む。抱卵育雛(いくすう)は雌雄ともに行うが,雌だけで抱卵する場合も知られている。また繁殖生態のわかっていない種もある。鳴声カラ類の声のように短く鋭い。種によっては複雑なさえずりももっている。一部の学者は,この科は旧世界のモズ科に縁が近いと考えているが,おそらく同じ新大陸のアメリカムシクイ科にいちばん縁が近いと考えられる。

 アカメモズモドキVireo olivaceus(英名red-eyed vireo)は南・北アメリカに分布する。メジロモズモドキV.griseus(英名white-eyed vireo)はアメリカ東部,メキシコ北東部で繁殖し,メキシコ以南の中央アメリカ,西インド諸島で越冬する。キノドモズモドキV.flavifrons(英名yellow-throated vireo)はアメリカ東部で繁殖し,中央アメリカ,南アメリカ北部,西インド諸島で越冬する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モズモドキ」の意味・わかりやすい解説

モズモドキ
もずもどき
vireo

鳥綱スズメ目モズモドキ科に属する鳥の総称。この科Vireonidaeの仲間は、北アメリカと南アメリカにわたる新世界に分布し、44種ほど知られている。全長10~18センチメートルの小形の鳥で、じみな灰褐色や草色のものから、黄色や白、黒ではでな色彩のものまでさまざまである。頸(くび)は短く、また、短くてじょうぶな足の前方の3本の指は元でくっついている。嘴(くちばし)はやや大きく先がとがり、上嘴の先は鉤(かぎ)のように下方へ曲がっている。樹林にすみ、高木や低木の葉の茂みで昆虫をとるが、果実も食べる。アカメモズモドキVireo olivaceusは、この科では北アメリカでもっとも普通の種である。ハイガシラモズモドキHylophilus decurtatusは中央アメリカの降雨林にいて、木の葉につり下がって虫をとる。

[中村登流]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モズモドキ」の意味・わかりやすい解説

モズモドキ
Vireonidae; vireos, greenlets

スズメ目モズモドキ科の鳥の総称。約 60種からなり,全長 10~18cm。すべて南アメリカ北アメリカに分布する。雌雄同色で,大部分の種は上背面が淡黄色,オリーブ色,灰色などで,腹面は白または淡黄色である。は上嘴の先がかぎ状になっている。果実も食べるが,おもに昆虫食で,トカゲを食べたという記録もある。森林や林縁部に生息し,樹冠や下層など,種によって暮らす場所は異なるが,どの種も樹上を動き回って食べ物を探すことが多い。木の枝のまたなどに吊り巣をつくって繁殖する。

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