日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
モラレス(Luis de Morales)
もられす
Luis de Morales
(1515/1520―1586)
スペインのマニエリスムの画家。南西部のバダホスに生まれ、同地に没。生涯と作品に関しては不明な点が多い。孤高の宗教画家であるが、彼がフランドル絵画とイタリア絵画に通じているところから、その画業はポルトガルもしくはセビーリャで形成されたと思われる。イタリア滞在説もあるが、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ビンチに学んだことは確かで、初期のマニエリスト、ベッカフーミらとの共通性もある。彼は各地の教会に数多くの祭壇衝立(ついたて)画を描いたが、その中心的主題は「聖母子像」「ピエタ」「エッケ・ホモ」などのキリスト受難図で、とくに後の二つの主題に関してはスペインにおける図像決定者の一人とされる。また人体の長身化において、スペインではエル・グレコを先駆する。彼の作品を支える精神は中世的なもので、その深い宗教性ゆえに「聖なるモラレス」Morales “El Divino”と通称される。
[神吉敬三]
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