日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
モリス(Ivan Morris)
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Ivan Morris
(1925―1976)
イギリスの日本文学研究家、翻訳者。ロンドン生まれ。「紫式部の文体」でロンドン大学より学位取得。『光源氏の世界』でダフ・クーパー賞を受賞。コロンビア大学東洋学部長、国際アムネスティ・アメリカ支部長として活躍。大岡昇平『野火』、三島由紀夫『金閣寺』、丸山真男(まさお)『現代政治の思想と行動』などを翻訳。私小説の始発を森鴎外(おうがい)の『舞姫』に指摘し、戦後文学の終焉(しゅうえん)を太宰治(だざいおさむ)の自殺に明証するなど、近代文学の史的構造に独自の分析を試みた。日本翻訳出版文化賞を受けた『枕草子(まくらのそうし)』(1967)の翻訳と研究で国際的名声を確立。主著『挫折(ざせつ)の高貴性――日本史の悲劇の英雄』(1975)は、三島由紀夫に捧(ささ)げられ、日本民族の精神史的研究の画期的成果として欧米の知識人に衝撃を与えた。A・ウェーリーの直弟子である。
[千葉宣一]
『斎藤和明訳『光源氏の世界』(1969・筑摩書房)』▽『斎藤和明訳『高貴なる敗北――日本史の悲劇の英雄たち』(1981・中央公論社)』