モンゴメリー(Wes Montgomery)(読み)もんごめりー(英語表記)Wes Montgomery

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

モンゴメリー(Wes Montgomery)
もんごめりー
Wes Montgomery
(1923―1968)

アメリカのジャズ・ギター奏者。本名ジョン・レスリー・モンゴメリーJohn Leslie Montgomery。インディアナポリスに生まれ、幼児期にオハイオ州コロンバスに移住。兄モンク・モンゴメリーMonk Montgomery(1921―1982)は後にベース奏者、弟バディ・モンゴメリーBuddy Montgomery(1930―2009)はピアノ奏者となる音楽一家の出身。兄に4弦ギターを買ってもらい、独学で12歳のころには一人前の技術を身につける。

 1940年ころモンゴメリー兄弟はインディアナポリスに戻り音楽の仕事につく。このころウェスはギター奏者チャーリー・クリスチャンレコードを聴いて感激し、彼の演奏をコピー、地元の「440クラブ」などに出演し、クリスチャンのソロを再現してみせる。この時期、昼間は牛乳工場に勤め、夜ジャズ・クラブに出演するという生活を送る。1948年、ビブラホーン奏者ライオネル・ハンプトン楽団に参加、ツアーに出るが、飛行機ぎらいで移動は自分で自動車を運転するなどしたため無理がたたり、1950年ハンプトン楽団を辞し故郷に戻る。しばらく音楽から離れていたが、やがて昼間ラジオ工場で働き、夜はジャムセッションに参加するという多忙な生活をふたたび始める。1955年、モンク、ウェス、バディの三兄弟によるバンドを結成、地元で評判をよぶ。

 1958年、評論家でもある音楽家ガンサー・シュラーGunther Schuller(1925―2015)が『ジャズ・レビュー』Jazz Review誌にウェスを絶賛した紹介記事を発表。1959年、ウェスの演奏を聴いたアルト・サックス奏者キャノンボール・アダレイ口利きで、リバーサイド・レーベルの専属ミュージシャンとなりニューヨーク進出、初リーダー作『ウェス・モンゴメリートリオ』を録音。翌1960年、リーダー作として吹き込んだ『インクレディブル・ジャズ・ギター』が『ダウン・ビート』Down Beat誌の最高点五つ星を獲得、彼の評価は決定的なものとなる。前2作を吹き込んだ後、インディアナポリスに戻り三兄弟による新たなバンド、モンゴメリー・ブラザーズを結成、ようやく音楽だけで生計をたてられるようになる。同年『ダウン・ビート』誌批評家投票の新人賞、『ビルボード』Billboard誌の「もっとも期待されるジャズ・ミュージシャン」に選ばれる。

 1961年モンテレー・ジャズ・フェスティバルテナー・サックス奏者ジョン・コルトレーン共演、グループへの参加を誘われるが、これは実現しなかった。1962年モンゴメリー・ブラザーズの活動は停止するが、ウェスは代表作『フル・ハウス』を、テナー・サックス奏者ジョニー・グリフィン、ピアノ奏者ウィントン・ケリーを共演者に迎えて吹き込む。1964年バーブ・レーベルに移籍、ヨーロッパツアーを行い、ヨーロッパのギター奏者に大きな影響を与える。翌1965年『フル・ハウス』で共演したケリーと傑作アルバム『ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー・トリオ』を録音するが、プロデューサー、クリード・テーラーCreed Taylor(1929―2022)の意向により、しだいにポピュラー・チューンをほとんどアドリブなしで演奏する「イージー・リスニング路線」へと転向を余儀なくされる。

 1967年、A&Mレコードにプロデューサーとして迎えられたテーラーはCTIシリーズを発足させ、第一弾としてモンゴメリーのアルバム『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』を制作。ジャズとしては記録的な売り上げを記録し、『ビルボード』誌ジャズ・チャートで32週トップの記録を樹立、ゴールド・ディスクに認定される。翌1968年、45歳で心臓麻痺(まひ)のため死亡。彼のギター奏法はピックを使わず親指の腹で弦を弾くユニークなもので、そのためまろやかで厚みのある音色が得られる。また、1オクターブ離れた音を同時に演奏する「オクターブ奏法」を開発するなどオリジナルな奏法を切り開き、ジャズ・ギター奏者に与えた影響は絶大なものがある。彼は即興演奏家として圧倒的な才能を発揮し、批評家、ミュージシャンたちからは高い評価を得たが、経済的にはさほど恵まれず、ほとんど即興を放棄した1960年代後期のアルバムが大衆的人気を博した事実は、ジャズという音楽のもつ特殊な性格を如実に示している。

[後藤雅洋]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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