ヤサイゾウムシ(読み)やさいぞうむし

改訂新版 世界大百科事典 「ヤサイゾウムシ」の意味・わかりやすい解説

ヤサイゾウムシ (野菜象虫)
Listroderes obliquus

甲虫目ゾウムシ科に属し,成虫幼虫ハクサイをはじめ各種の野菜類の芽や葉を食害する。ハルジオンヒメジョオンなどの野草にも見られ,食性はきわめて広い。体は褐色鱗片と毛を生ずる。口吻こうふん)には3本の隆起条があり,胸部背面の中央および上翅の後方には鱗片からなる淡色紋がある。体長9mm内外。ブラジルが原産地であるが,1940年岡山県下で最初に発見され,今日では日本各地に分布する。雄は発見されず,雌のみで繁殖し,植物の根の付近の土中へ点々と産卵する。1匹で1000卵以上を産むといわれる。成虫は夏眠期を除いて3~10月ころまで活動する。成虫,幼虫とも日中は根の近くに潜み,夜間現れて葉や心芽を食する。幼虫期間は春から夏までは2ヵ月余り,秋,孵化(ふか)したものは幼虫で越冬する。幼虫は土中へ潜って蛹化(ようか)する。幼虫は緑色で胸脚を欠く。頭部に褐色斑紋を,気門周縁には半円形の褐色紋を有する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤサイゾウムシ」の意味・わかりやすい解説

ヤサイゾウムシ
やさいぞうむし / 野菜象虫
[学] Listroderes costirostris

昆虫綱甲虫目ゾウムシ科に属する昆虫。ブラジル原産であるが、日本に土着し、本州、四国、九州に産する。また、台湾、北アメリカ、オーストラリア、アフリカにも侵入している。体長9ミリメートル内外。褐色で鱗片(りんぺん)と毛に覆われて光沢がない。背面の毛は黒く、鱗片は灰褐色がおもで明暗の鱗片を混じ、前胸背部中央の縦条と上ばね中央後ろにある横帯紋は淡色。体形は長めで背面は平たく、前胸はかなり幅が広くて後方が狭まり、側縁は稜(りょう)状、前縁は両側で目のほうへ張り出す。上ばねは両側がほぼ平行し、後方で狭まる。少なくとも日本では雌だけしか発見されず、単為生殖で増える。初めて発見されたのは1942年(昭和17)ごろで、第二次世界大戦後、侵入害虫として注目された。アブラナ科の蔬菜(そさい)、ニンジン、タバコなどの害虫であるが、雑草とされる植物もよく食べるので、作物の被害はそれほど大きくないという。

[中根猛彦]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤサイゾウムシ」の意味・わかりやすい解説

ヤサイゾウムシ
Listroderes obliquus; vegetable weevil

鞘翅目ゾウムシ科。雌の体長 9mm内外。雄は発見されていない。体は赤褐色で,灰褐色の鱗片と毛で密におおわれるが,体下面では淡黄色を帯びる。吻はやや太く,3隆条がある。前胸は丸い。上翅は長く,基半部は両側がほぼ平行,間室は明瞭で,後方に鱗片による白色斑がある。野菜の大害虫。幼虫は緑色の蛆状で,成熟すると土中に入って蛹化する。成虫は灯火に集る。ブラジル原産でオーストラリア,ハワイ,北アメリカ,南アフリカなどに広がり,日本には 1942年頃侵入し,本州,四国,九州に広まった。

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