ヤシドリ(英語表記)Dulus dominicus; palmchat

改訂新版 世界大百科事典 「ヤシドリ」の意味・わかりやすい解説

ヤシドリ (椰子鳥)
palmchat
Dulus dominicus

スズメ目ヤシドリ科の鳥。この科はヤシドリ1種だけからなる。全長約18cm。雌雄とも背面は灰色がかったオリーブ色で,頭部はやや色が濃く,下面白地暗褐色の太い縦斑がある。くちばしはじょうぶで,脚も強い。尾はかなり長い。西インド諸島イスパニオラ島とその付属小島に限って分布している。高い木の散在する開けた場所を好み,とくにヤシの木の生えているところに多い。1年を通じて10羽前後の小群をつくり,木から木へ活発に飛び歩いて,小型の果実,漿果(しようか),新芽やつぼみなどを食べている。

 この鳥の特徴は繁殖習性である。高いヤシの木の頂上に,4~10つがいの鳥が小枝や枯茎を組み合わせて大きな球形の共同の巣をつくる。この巣は,アパートのように入口も産室も各つがいごとに分かれていて,産室内は枯葉やヤシの繊維などを敷いて産座としている。巣はたえず補強されるので,だんだん大きくなり,直径1mくらいになるが,巣を支えているヤシの葉が枯れて落ちると,巣も地上に落ちてしまう。なお,ヤシの木がないとマツの木などに営巣するが,この場合は1~2つがいで巣をつくり,巣もあまり大きくない。卵は白地に暗色の斑が密にあり,1腹2~4個を産む。繁殖期は3~6月。さえずりはしないが,巣の近くや採食中にいろいろな声を出す。この鳥はレンジャク類と類縁が近いと考えられているが,真の類縁関係はわかっていない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤシドリ」の意味・わかりやすい解説

ヤシドリ
Dulus dominicus; palmchat

スズメ目ヤシドリ科。ヤシドリ科 Dulidaeは本種 1種だけからなる。全長 18~20cm。背面はオリーブ褐色。腹面は緑色がかった白色でチョコレート褐色の縦縞が密にある。腰と初列風切羽は暗い黄緑色。赤みのある黄色で,短くて鋭い。西インド諸島ハイチドミニカ共和国(→ヒスパニオラ島)に留鳥として分布する。平地から標高 1500mの高木のまばらな開けた林や都市公園,農園に生息し,ヤシを含めて小型の果実,漿果(→液果),花弁などを食べる。10つがいほどが共同でダイオウヤシの樹冠に小枝を集めてドーム型の巣をつくる。大きな巣は直径が 2mもあり,各つがいの占める巣室が 30もある。ヤシのない所ではほかの木や電柱に巣をつくることもある。卵は白色で,2~4個産卵する。一年を通じて小群で暮らし,いろいろな鳴き声を出すのでかなり騒々しい。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤシドリ」の意味・わかりやすい解説

ヤシドリ
やしどり / 椰子鳥
palmchat
[学] Dulus dominicus

鳥綱スズメ目ヤシドリ科の鳥。1種で科を構成する。西インド諸島のうちハイチ、ドミニカにのみ分布している。全長13センチメートル。背面は緑褐色で、下面は黄褐色に暗色の縦線をいくつももつ。開けた環境を好むが、ヤシの木が必要で、高いヤシの木の上に巣をつくる。活発な鳥で、よく群れをつくる。

[柳澤紀夫]

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