ヤマウツボ(読み)やまうつぼ

改訂新版 世界大百科事典 「ヤマウツボ」の意味・わかりやすい解説

ヤマウツボ (山靫)
Lathraea japonica Miq.

山地湿気のある落葉樹林中に生えるゴマノハグサ科の寄生植物。全体,白色でやや褐紫色を帯び,ヤシャブシなどの木の根もとに群生する。茎は直立して高さ15~30cmになり,地下茎は多肉の鱗片状の葉で密に覆われる。地上の花茎には,まばらに大型の鱗片葉がある。花は5~7月,花茎の先に密につける。花冠は筒形で先は唇形となり,白色でやや赤紫色を帯び,長さ約12mm。蒴果(さくか)は倒卵形で先がとがり,長さ約5mm,1~2個の種子をもつ。本州の関東地方以西,四国,九州,朝鮮(鬱陵島)に分布する。全形がハマウツボに似るのでときにハマウツボ科のものともされるが,子室は2室で各室2個の胚珠をもつので,ハマウツボ科とは異なる。和名は花穂が矢を入れる靫に似て,山に生えるのでいう。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマウツボ」の意味・わかりやすい解説

ヤマウツボ
やまうつぼ / 山靭
[学] Lathraea japonica Miq.

ゴマノハグサ科(APG分類:ハマウツボ科)の多年草。全体が黄白色で、ヤマハンノキなどの根に寄生する。茎は地中にあり、重なり合った多肉質の鱗片(りんぺん)で覆われ短い根を寄主の体内に伸ばす。春、高さ13~30センチメートルの花茎を出して穂状花序をつくり、多数の花を開く。花冠は白色でやや紅紫色を帯び、唇形で長さ約1.2センチメートル。山地のやや湿った所に生え、本州から九州、中国などに分布する。名は、花穂がうつぼに似ることによる。

山崎 敬 2021年9月17日]

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