ユンガー(Ernst Jünger)(読み)ゆんがー(英語表記)Ernst Jünger

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ユンガー(Ernst Jünger)
ゆんがー
Ernst Jünger
(1895―1998)

ドイツの小説家、評論家、思想家。ハイデルベルクの生まれ。徹底したドイツ的気質と作風のせいか、わが国ではあまり知られていないが、ドイツでは詩人ベン、哲学者のハイデッガーと並ぶほど高名な文壇長老晩年は南ドイツ、ビルフリンゲンに隠棲(いんせい)し著作に従事した。クレット・コッタ社から刊行中の全集は18巻。「魔術的リアリズム」とよばれる雄渾(ゆうこん)簡潔な文体が際だつ。ニーチェの思想的影響から「英雄的ニヒリズム」とも称される行動と瞑想(めいそう)の思索家。17歳でフランス外人部隊入隊を志した体験に基づく小説『アフリカ遊戯』(1936)が知られる。第一次世界大戦中の武勲(プール・ル・メリット勲章受章)や、エッセイ『総動員』(1930)、『労働者―支配と形態』(1932)などから、しばしばナチスへの思想的親近を批判されるが、むしろ「第三帝国の明白な案内人でありながら、ナチズムの明白な敵対者」(P・リラ)とみるのが妥当であろう。晩年は、得意の博物学、心理学、神秘思想など広大な領域を基盤に、多くの日記、文明批評、旅行記を通して現代精神の超克を目ざしていた。未来小説『ヘリオポリス』(1949)は哲学的SF小説として知られる。

[三木正之]

『相良守峯訳『大理石の断崖の上で』(1955・岩波書店)』

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