ユーフォルビア(英語表記)Euphorbia

デジタル大辞泉 「ユーフォルビア」の意味・読み・例文・類語

ユーフォルビア(〈ラテン〉Euphorbia)

トウダイグサ科トウダイグサ属一年草または多年草。ほぼ世界中に分布し、多肉植物あるいは観葉植物として栽培される。本来は、トウダイグサ科の属名一つ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ユーフォルビア」の意味・わかりやすい解説

ユーフォルビア
Euphorbia

トウダイグサ科トウダイグサ属Euphorbiaのうちの多肉植物を,園芸的にはユーフォルビアあるいは多肉ユーフォルビアと総称する。また近年,石油植物としてトウダイグサ属をユーフォルビアの名で扱う報告書も見られる。多肉ユーフォルビアは500種をこす大群で,アフリカ,マダガスカルを中心に,アラビア,インド,メキシコなどに分布する。

 多肉ユーフォルビアの形態はきわめて多様で,サボテン科に匹敵するほど変化に富む。しかし,形態上相同に見えても,とげは側枝や花梗托葉の変形したもので,サボテンのように短枝葉の変形ではない。サボテンに見られる刺座や毛もない。花は一般に1対の包葉が着色し花弁状となり,通常の花弁や萼がない。正常のおしべ以外に葯の発達しない不完全おしべがある。おしべに関節を有することから,1個1個のおしべを退化した雄花,めしべは退化した雌花とみなし,花を花序とする見解もある。茎葉を傷つけると白い乳液が出るが,その中からユホールeuphol,チルカロールtirucallol,ユホルボールeuphorbolやアルファアミリンα-amyrinをはじめ,石油関連のステロイド系のトリテルペノイドの立体異性体が10以上発見されている。

 常緑葉の有無,とげの有無や形,花梗が宿存するか否かなどで六つの群に大別されるが,主な種群は茎に稜ととげを欠く緑枝類,花梗がとげ状に宿存する花刺類,1対の托葉刺をもち,多くはそれが裂けるハナキリン類(裂刺類),茎は有稜で,花梗は宿存せず,針状刺をもつ対刺類の4群である。(1)緑枝類低木状で,葉は小さく早落性,枝は細い円柱形で,稜はない。アオサンゴE.tirucaliiL.(英名milk bush)は東アフリカのサバンナ原産で,自生地では高さ7mに達する。ゴムサンゴE.intisyi Drakeはマダガスカル原産で,かつて乳液からゴムを採った。(2)花刺類南アフリカが主産地で,小型の高度に多肉化した種が多く,球サボテンに似た形態の種もある。テッコウマル(鉄甲丸)E.bupleurifoliaHaw.) Jacq.は高さ10cmほどだがソテツミニアチュアのような幹をもつ。葉は倒披針形で長さ8~15cm。クズリュウ(九頭竜)E.inermis Mill.は茎頂がたこ足状に分頭する特異な種。ユーフォルビア・ホリダE.horrida Boiss.は茎には12~20の深い稜があり,肌は白く帯粉し美しい。ユーフォルビア・オベサE.obesa Hook.は若いうちは球形で,のち短い円柱形に伸び,体に横縞がある。ユーフォルビア・バリダE.valida N.E.Br.は茎が球状で8~12稜ある。(3)ハナキリン類マダガスカルに40種余り特産する。赤花のハナキリンE.milii var.splendens (Boj.) Ursch et Leandriで代表されるが,黄花や茎が塊根性の種もある。(4)対刺類柱サボテン状で大型のチュウテンカク(沖天閣)E.ingens E.Mey.は東アフリカのサバンナの景色を特色づける。キリンカク(キリン角)E.neriifolia L.はインド産で,18世紀中ごろまでに日本に渡来した。

 多肉ユーフォルビアは観賞用以外に乾燥地の緑化や石油植物として脚光を浴びつつある。乳液はかぶれることがあるので扱いには注意が必要。九頭竜など少数の例外を除いて0℃以下では枯死する。排水良好の用土に植え,強光下で育てる。繁殖は挿木が容易である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のユーフォルビアの言及

【トウダイグサ】より

…平地の路傍や河畔に普通に見られるトウダイグサ科の二年草(イラスト)。ユーラシアの暖温帯に広く分布し,日本では本州,四国,九州に産する。高さ30cm内外。切ると白色の乳液が浸出し,有毒。葉は互生し,倒卵形で細かい鋸歯がある。茎の先に5枚の輪生葉が生じ,5本の分枝に黄緑色で広卵形の苞葉と,径2mmほどの杯状花序を密につける。和名はこの風変りな草形を昔の灯台に見立てたことに由来している。花期は4~5月ごろ。…

※「ユーフォルビア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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