ヨシキリザメ(読み)よしきりざめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨシキリザメ」の意味・わかりやすい解説

ヨシキリザメ
よしきりざめ / 葦切鮫

軟骨魚綱メジロザメ目メジロザメ科の属の総称、またはその1種の名称。ヨシキリザメ属PrionaceはヨシキリザメP. glauca英名blue shark)の1属1種からなる。メジロザメ科のなかでは、体が細長く、体の背面が一様な暗青色から緑青色であること、第1背びれが胸びれよりも腹びれにより近いこと、非常に長い胸びれをもつこと、上顎歯(じょうがくし)は幅広く、外方に湾曲した高い三角形状で、縁辺に鋸歯(きょし)があることなどが特徴である。この種は全世界の熱帯から亜寒帯に分布するが、とくに水温が7~15℃の海域を好むので、亜寒帯海域では表層付近に生息し、熱帯海域ではやや深い所に多くみられる。北太平洋では北緯20度以北に多く、この付近で初夏に交尾し、雌は約1年の妊娠期間を経て、北緯30~40度で出産をする。産まれた幼魚はさらに北の亜寒帯境界域を生育場として成長するが、成熟すると熱帯域にまで生息域を拡大する。大規模な東西の回遊もすることがあり、9200キロメートルも移動した例がある。外洋の中緯度海域ではヨシキリザメの資源量は非常に多く、しかも食物連鎖の最上位を占めるため、その資源量の変動は生態系全体に大きな影響を与える。生殖方法は胎盤型の胎生で、全長35~60センチメートルの子を、最大で135尾産む。全長3.8メートルほどになる。延縄(はえなわ)などで大量に漁獲され、肉は練り製品原料に、皮は皮革製品、骨は薬品ひれは中華料理のユイチー(ふかひれ)の原料として、有効に利用されている。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、準絶滅危惧(きぐ)(NT)に指定されている(2021年9月時点)。

[仲谷一宏 2021年10月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ヨシキリザメ」の意味・わかりやすい解説

ヨシキリザメ (葭切鮫)
Prionace glauca

メジロザメ目メジロザメ科の海産魚。鳥類のヨシキリに似て頭がとがり,眼が大きく胸びれが長いところから名付けられたという。英名は体色にちなんでblue shark,great blue shark,blue whalerなどという。全世界の熱帯から亜寒帯にかけての外洋域に広く分布する。全長4mになる。体がほっそりとし,口先と胸びれが長く,両顎歯の周辺がのこぎり状であることが特徴。体は藍青色で腹面は白い。卵黄胎盤を有する胎生で,交尾期は3~8月ころ,妊娠期間は9~10ヵ月。12~4月ころに全長45cmくらいの子を10~60尾,平均25尾ほど生む。熱帯から亜熱帯ではやや深いところに,温帯や亜寒帯では表層近くを遊泳する。季節的に移動し,夏は北上,冬は南下する。サメ類中外洋域ではもっとも数が多い。頭足類や魚類を食べる。性質は荒く,人を襲うこともある。マグロはえなわで漁獲されるが,肉は水っぽいので練製品に利用される。
サメ
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百科事典マイペディア 「ヨシキリザメ」の意味・わかりやすい解説

ヨシキリザメ

メジロザメ科の魚。地方名アオナギ,ミズザメ,グタ,アオブカなど。全長4mになる。眼が大きく,口先と胸びれが長い。紺青色。暖海に広く分布し,表層〜中層にすむ。マグロ延縄(はえなわ)でよくとれ,肉は練製品の原料,ひれはユイチー(フカのひれ)として食される。
→関連項目鱶の鰭

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨシキリザメ」の意味・わかりやすい解説

ヨシキリザメ
Prionace glauca; blue shark

メジロザメ目メジロザメ科の海水魚。全長 4m。体は細長い紡錘形で,吻がとがる。尾鰭起部の尾柄上下に凹窩がある。呼吸孔をもたない。眼は丸く,瞬膜がある。胸鰭は長く鎌状。体の背方は暗青色,腹方は白色。性質は荒く,水泳中の人を襲うことがある。常に表層を遊泳する。胎生で,普通 25~50尾を産む。世界の暖海に広く分布する。

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栄養・生化学辞典 「ヨシキリザメ」の解説

ヨシキリザメ

 [Prionace glauca].メジロザメ科のサメ.40cmほどになる.はんぺんの材料にするほか,ひれをフカひれスープなどに使う.

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