ラウターバー(読み)らうたーばー(英語表記)Paul Christian Lauterbur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラウターバー」の意味・わかりやすい解説

ラウターバー
らうたーばー
Paul Christian Lauterbur
(1929―2007)

アメリカの化学者。オハイオ州シドニーに生まれる。ケース工科大学(現、ケース・ウェスタン・リザーブ大学)で化学を学び、1951年に卒業、1962年ピッツバーグ大学博士号を取得した。1969年から1985年までニューヨーク大学で化学・放射線学の教授、1985年からはイリノイ大学シカゴ医学校教授および生命医学MR研究所長を務めた。1994年(平成6)に第10回京都賞を受賞したほか、ラスカー賞、国際磁気共鳴学会賞などを獲得している。

 ラウターバーは、1973年に磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging=MRI)の原理を発表した。MRIは、水素原子に共鳴する強い磁場をかけて水素原子の挙動を測定することにより、生体内に存在する水分の分布を把握、それをコンピュータで映像に合成して生体の二次元断面像を得るものである。MRIはX線を用いないため、人体に害がなく、自由な角度で撮影できるので、1980年代から広く使用されている。ラウターバーはこの業績により2003年のノーベル医学生理学賞を受賞、MRIの高速映像法を開発したマンスフィールドとの共同受賞であった。

[編集部]

『ネイチャー編『知の歴史――世界を変えた21の科学理論』(2002・徳間書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラウターバー」の意味・わかりやすい解説

ラウターバー
Lauterbur, Paul

[生]1929.5.6. オハイオ,シドニー
[没]2007.3.27. イリノイ,アーバナ
アメリカ合衆国の化学者。ケース工科大学で化学を専攻し,1962年にピッツバーグ大学で博士号を取得した。 1969年から 1985年までニューヨーク州立大学ストーニー・ブルック校の教授。 1985年イリノイ大学に移り,バイオメディカル磁気共鳴研究所の所長となった。核磁気共鳴 NMR現象を利用して人体などの断層画像を得る研究は 1970年代に始まった。ラウターバーは 1973年に人体の各部分の水に含まれる水素原子からの NMRデータを使う考えを,科学誌『ネイチャー』に最初に発表した。磁気共鳴画像 MRIを開発した業績により,2003年ピーター・マンスフィールドとともにノーベル生理学・医学賞を受賞した。ほかにも 1982年ゴールド・メダル,1984年アルバート・ラスカー医学研究賞,1994年京都賞などの賞を受けている。

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百科事典マイペディア 「ラウターバー」の意味・わかりやすい解説

ラウターバー

アメリカの化学者。オハイオ州生れ。ケース工科大学(現,ケース・ウェスタン・リザーブ大学)化学科を卒業し,ピッツバーグ大学で博士号を取得。ニューヨーク州立大学教授,イリノイ大学教授を務めた。1973年に画像診断法である磁気共鳴映像法(MRI)の基本原理を考案し,その後も実験的にその可能性を確かめ,1980年代には広く医学の世界で使用されるようになった。MRIによる医療診断技術の発展に貢献した功績によって,2003年にイギリスのピーター・マンスフィールドとともにノーベル生理学・医学賞を受賞した。→ノーベル賞

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