アラビア半島東部,ペルシア湾に面するアラブ首長国連邦の構成国。ラアス・アルハイマ,ラァスルハイマなどとも表記する。面積1700km2,人口21万(2005)。山間部と海岸部と島からなり,連邦内では珍しく変化に富む地形である。降水量は平均年150mmと連邦随一で,山間部では良質の水が得られる。山岳と海岸の間に耕地がひろがる。耕地面積は連邦最大で,農業人口も多い。ナツメヤシ,スイカ,トマトなど果樹,野菜のほかに羊,ヤギ,牛などの畜産もある。漁業も盛んである。山から採れる石がコンクリート用材料として貴重な輸出品になっている。
数千年前とされる文明の遺物が発見されているのみならず,中世の繁栄を示す10世紀ころの監視塔も残っている。ラス・アルハイマの北部にあるジュルファルはアケメネス朝時代までさかのぼる古い港町で,マルコ・ポーロの《東方見聞録》にもその名が記されている。16世紀以後はヨーロッパとアラブの抗争の拠点となり,その遺構もある。18世紀以降はアラブのカワーシム(ジョワーシミー)族がシャルジャおよびラス・アルハイマに根を下ろし,ヨーロッパ人に対抗して一時はホルムズ海峡の支配権を握ったこともある。1820年カワーシム族はイギリス艦隊に敗北,以後休戦協定が結ばれ,彼らの勢いは急速に衰えていった。1869年には,ラス・アルハイマはシャルジャから実質的に独立する(イギリスが公式に独立を認めたのは1921年)。現在の首長も,このワーシム族の出である。
執筆者:冨岡 倍雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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