ラブドフェン(読み)らぶどふぇん(英語表記)rhabdophane

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラブドフェン」の意味・わかりやすい解説

ラブドフェン
らぶどふぇん
rhabdophane

セリウム族希土類のリン酸塩鉱物。主成分である希土類元素中、最大量を占めるものの種類によって、セリウムラブドフェンrhabdophane-(Ce)、ランタンラブドフェンrhabdophane-(La)、ネオジムラブドフェンrhabdophane-(Nd)に細分されている。日本では愛媛県松山市立岩(たていわ)の花崗(かこう)岩質ペグマタイト中から、二次的に生成されたネオジムラブドフェンを産する。1~2分子含まれている結晶水を加熱処理して除去すると、本質はモナズ石構造をもった物質に転移し、その際生成される物質は非常に多孔質になる。この物質中の空隙(くうげき)が排気ガス中の有害物質の捕捉(ほそく)能力をもっているので、排気ガス用フィルターの素材として、人工的なラブドフェン型化合物の合成が盛んに行われている。

 鉱物自体は、ある種の熱水鉱脈鉱床の脈石鉱物として、また堆積(たいせき)性褐鉄鉱鉱床の少量随伴鉱物として産する。肉眼で認められる自形は報告されていないが、電子顕微鏡下では柱面、底面、庇(ひ)面などからなる六角短柱状のものが観察されている。英名ギリシア語のrhabdos(棒)とphainesthai(出現)に由来し、これは輝線スペクトルをとると希土類元素の線が棒のように多数出現することによる。鉱物の命名の由来としては特殊な例である。

加藤 昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android