ラメトリー(英語表記)Julien Offroy de La Mettrie

改訂新版 世界大百科事典 「ラメトリー」の意味・わかりやすい解説

ラ・メトリー
Julien Offroy de La Mettrie
生没年:1709-51

フランスの医師,哲学者。カンとパリのコレージュ(高等学校)で学んだのち,1733年ランス大学で医学博士の学位を得た。ついでライデン大学ブールハーフェの教えを受け,42年にフランス近衛隊付き軍医に任命された。フランドルの戦闘に従軍したが,45年に唯物論的立場を表明した著書《魂の自然誌》を刊行したため,軍医の地位を失った。3年後,さらにその立場を推し進めた《人間機械論》を発表,人間は機械であり,人間の思考は,脳髄の単なる性質にすぎないと主張した。彼に先立つデカルトは,動物は機械であるとしながらも,精神をもつ人間だけはそこから除外し,動物と人間との差別を強調していたのであるが,ラ・メトリーはこの差別を撤廃し,デカルトの機械的自然観を人間にまで徹底させたのである。この著書のため彼は身の危険を感じ,48年プロイセンフリードリヒ大王のもとに亡命。以後ベルリンにとどまり,プロイセン・アカデミーの会員,および国王付きの朗読係として国王の寵愛を受け,その地で死んだ。医学上の著書としては《眩暈論》《天然痘論》《喘息論》など,哲学上の著作としては,前記ほか《人間植物論》《機械以上の人間》《反セネカ論,あるいは幸福論》《エピクロス学説》《音楽論》などがある。
人間機械論
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のラメトリーの言及

【生物学】より

…こうした各種の生命観は,実験や観察に方向づけを与える一方,生命観のほうも新しい知見によって変化をとげていった。18世紀なかごろにラ・メトリーが,デカルトの動物機械論を急進的に延長してとなえた《人間機械論》は,生命を物質原理に帰着させようとする主張であったし,A.vonハラーの《人体生理学要綱》(1756‐66)は,被刺激性という特有の原理によって,生理現象を統一してとらえようとした。こうして知識が重なり,多面化するにつれて,生命の包括概念が求められ,また生命現象を対象とする独自の学の必要が感じられて,19世紀の夜明けとともに〈生命の学〉としての生物学が提唱されたことは必然の流れであり,その後の方向を予告するものでもあった。…

【生命】より

…ただデカルトは人間だけには霊魂の存在を認めた。これに対し次の18世紀のラ・メトリーは,《人間機械論》(1747)において人間の霊魂をも否定し,生命機械論を徹底させた。かれもまたゼンマイ時計を比較の対象とした。…

【人間機械論】より

…しかし,この心身の結合のしくみをめぐって,デカルトによって提起された哲学問題は,〈心身問題〉と呼ばれて,人間機械論の中心にかかわる問題として現在に至っている。 18世紀に至り,フランスの医師ラ・メトリーは徹底した唯物論の立場をとって《人間機械論》(1748)という著作を著し,人間を,精神をも含めて,完全に機械であるとする議論を展開した。彼はここで当時の自然科学,とくに医学の知識を活用して,精神現象をもすべて機械的な物質現象に還元することを試みた。…

【ロボット】より

…機械じかけの人形を製作することは,それ以降近世にかけて特に盛んに行われるようになり,近代的ロボットの前史を形成した。これに加え,みずからも自動人形を所有したデカルトの出現とともに,人間の身体生理機構を一種の機械とみる考え方がフランスを中心に広まり,ラ・メトリー《人間機械論》(1748)などの出版をみた。人間が機械から区別される要因は,魂や理性をもつことにもとめられたが,18世紀にはこれすら機械的な本質をもつとする考え方も生じた。…

※「ラメトリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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