リオブラボー(英語表記)Rio Bravo

改訂新版 世界大百科事典 「リオブラボー」の意味・わかりやすい解説

リオ・ブラボー
Rio Bravo

1959年製作のアメリカ映画。《赤い河》(1948)に次ぐハワード・ホークス監督,ジョン・ウェイン主演の西部劇で,このあと同工異曲プロットと人物配置をもつ同じコンビの西部劇《エル・ドラド》(1966),《リオ・ロボ》(1970)と合わせて〈リオ・ブラボー三部作Rio Bravo Trilogy〉とよばれる。

 ウィル・ライト著《六連発銃と社会》(1975)によれば,開拓民の共同体を〈悪〉から守るヒーローの活躍を描いた〈古典的なプロット〉の西部劇に対して,まずジョン・フォード監督の《駅馬車》(1939)が個人の執念に生きるヒーローを描く〈復讐のテーマ〉の西部劇のはじまりとなり,次いで《リオ・ブラボー》がプロのガンファイターたちのプロとしての誇りと責任や腕の競い合いを興味の中心とする〈プロフェッショナルのテーマ〉を開いた西部劇として,トーキー以後の西部劇の流れを変えたという。事実,《リオ・ブラボー》以降の1960年代,70年代の西部劇は,《荒野の七人》(1960),《プロフェッショナル》(1966),《ワイルドバンチ》(1969),《明日に向って撃て!》(1970)等々のように,〈プロフェッショナル〉の集団を描いたものが主流を占めるようになった。なお,ホークスみずからが語るところによれば,この作品は,《真昼の決闘》(1952)のような町民に助けを求めるといったプロ根性を欠いた軟弱な保安官主人公にした〈アンチ西部劇〉の流行に対するアンチ・テーゼとして構想されたものであるという。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のリオブラボーの言及

【西部劇】より

…トーキー時代を迎えて,西部劇は馬のいななきやひづめの音や銃声や西部民謡といった〈音声〉の魅力を加えて発展し,他のジャンルと同様に音にふりまわされるという一時の試行錯誤はあったものの,あくまでも野外のドラマという条件のために室内劇のような台詞過剰に陥ることはなく,ラオール・ウォルシュ監督《懐しのアリゾナ》(1929)やキング・ビダー監督《ビリー・ザ・キッド》(1930)で効果的に使われたギターやピアノを使った音楽場面,銃撃戦,野宿のフライパンの中でベーコンの焼ける音といった音の使い方はその後の西部劇にも不可欠の要素となった。
[全盛期から西部劇の変容へ]
 西部劇の全盛時代は,ジョン・フォード監督《駅馬車》(1939)からハワード・ホークス監督《リオ・ブラボー》(1959)に至る20年間であるというのがほぼ定説になっている。〈アメリカ自身が迷わなかった〉時代であり,映画をつくる側も見る側も迷わず〈フロンティア・スピリット(開拓者精神)〉を信じて夢を描くことができた時代であり,またサイレント時代からたたき上げてきた特色ある監督や俳優が円熟あるいは絶頂を極めた時期でもあった。…

※「リオブラボー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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