改訂新版 世界大百科事典 「リポタンパク(蛋白)質」の意味・わかりやすい解説
リポタンパク(蛋白)質 (リポたんぱくしつ)
lipoprotein
脂質とタンパク質の複合体の総称。大腸菌外膜の構成成分であるリポタンパク質のように,タンパク質部分と共有結合で結合した脂肪酸をもつ不溶性タンパク質もあるが,通常は血漿(けつしよう),卵黄,ミルクなどに存在する水溶性のものを指す。血漿中のものは比重の小さいものから,カイロミクロンchylomicron,超低密度リポタンパク質(VLDL),低密度リポタンパク質(LDL),高密度リポタンパク質(HDL),超高密度リポタンパク質(VHDL)に分類され,それぞれの間で脂質,タンパク質組成が異なる。いずれも中心部に非極性脂質をもち,その周囲を極性脂質,タンパク質成分が包む構造をとり,非水溶性の脂質の体内輸送に寄与している。カイロミクロン,VLDLは主成分トリアシルグリセリンの腸管,肝臓,脂肪組織,筋肉などの間の輸送に,またLDL,HDLはそれぞれ周辺組織へ,および各種組織から肝臓へのコレステロールの輸送に関与していると考えられているが,不明の点も多い。LDLの代謝および動態には,動脈硬化症との関連で近年大きな関心が寄せられている。
執筆者:川喜田 正夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報