リン酸水素アンモニウムナトリウム(読み)りんさんすいそあんもにうむなとりうむ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

リン酸水素アンモニウムナトリウム
りんさんすいそあんもにうむなとりうむ
ammonium sodium hydrogenphosphate

四水和物Na(NH4)HPO4・4H2Oが普通で、リン塩とよばれる。リン酸水素二ナトリウム熱水溶液塩化アンモニウムを加えて冷却すると得られる結晶。無水和物の化学式Na(NH4)HPO4、式量137.01。四水和物の密度1.574。水によく溶ける。アルコールには不溶。アンモニアを失いやすく風解する。熱すると90℃でアンモニアを失い始め、200℃でNa2H2P2O7となり、280℃でメタリン酸ナトリウムとなる。高温で種々の金属酸化物を融解し、その金属特有の着色をしたリン塩球をつくるので、分析化学において金属イオン判定に用いられる。

[中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 の解説

リン酸水素アンモニウムナトリウム
リンサンスイソアンモニウムナトリウム
ammonium sodium hydrogenphosphate

NaNH4HPO4(137.01).普通は四水和物で,リン塩(microcosmic salt)ともいわれる.天然にもスタコライト(stercorite)として産出する.Na2HPO4の濃い熱水溶液に計算量のNH4Clを加え,冷却すると四水和物が析出する.または,NaH2PO4の飽和水溶液にNH3を通すと生成する.四水和物は無色の三斜晶系柱状結晶.密度1.57 g cm-3.P-O約1.52~1.58 Å.P-OH約1.59 Å.風解性がある.水に可溶(水溶液はアルカリ性),エタノールに不溶.90 ℃ でNH3を失い,200 ℃ でNa2P2O7になり,280 ℃ でNaPO3になる.錬金術時代から知られ,リン塩球テストは,金属元素の定性確認の一手段で,特有の着色から金属を識別する方法である.[CAS 13011-54-6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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